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第二夜
捕食者 ※
しおりを挟むその瞬間ブザーが鳴り、処刑者の周りの床から見たことも無い巨大な触手が現れた。
毒々しい紫色の太い無数の触手。表面は粘液に覆われ、蠢く度に床に水溜まりを作る。無数の触手は高いホールの天井触まで覆う。
たちまち洒落た洋館は触手に覆われたおぞましい空間と化した。壁をも覆った触手は座ったままの御廻刑治の手足を捕え、この世のものとは思えないおぞましい鳴き声を上げる。
「なんだ、これは……」
隣で雪話さんが息を飲む。……なんだ、なんなんだ、これは。こんなの、こんなのって……
「……ぁ……あ……はは、ははは……」
御廻刑治は静かに笑った。諦観の乾いた笑い。
「なんなんですか、これ……こんな結末のために、僕は、ぼくはこれまで……はは、……馬鹿、みたいだなぁ……」
彼はもう恐怖を隠そうともしない。強大過ぎる処刑人を前にして、震えながら泣いていた。……小さな声で「はなしてくれ」と繰り返しながら。
「どう、するつもりだ。彼は、どうなる」
海画さんが声を張り上げる。その間にも、触手は一本一本意志を持っているかのように彼を拘束し、宙ぶらりんにする。ぬめりのある液体が生々しい音をたてて蠢く。
……相手は気が狂った変態共の組織なんかじゃ無かった。……人間じゃない、本物の、化け物。信じたくなんてない。だけど、今、御廻刑治の声が、汗が、その実在を証明している。
『ふふ、そう怖がらないでください。御廻刑治様、貴方はこれからとても光栄な任務を仰せつかれるのですよ』
……光栄な、任務?
「なんだ、それ、なんなんだよこれは……処刑って、なんのことなんだよ、それに、それに……」
……希望なんて無い。分かっている。分かっていて、俺は叫んだ。
「球太は、どうなんだ……!!処刑を見れば分かるって、言っただろ……!!」
『砂浜球太様も内容は違えど今現在重要な任務を遂行なさっていますよ。御廻刑治様も、同じようにこれからずっと、永遠に我々の任務を遂行して頂きます』
ずっと……?永遠に……?なんだよ、それ。なんだ、なんの冗談だよ
『心配なさらないでください。すぐに良くなれますから。』
「……」
御廻刑治はもはや何も言わない。ただ絶望して触手に固定された右腕を眺めていた。その間も床から触手は絶え間なく生えてくる。
『天花神に見初められたようですよ。良かったですねぇ』
その瞬間、触手が御廻刑治の口に突っ込まれる。
「か゛ッ、?!」
触手はドクドクと脈を打って何か液体のようなものを飲ませていた。御廻刑治の口端から透明の粘り気のある液体が溢れ出る。
「ン゛、か゛ァ、ッ」
触手は粘液を出し切るために前後に無茶苦茶に動いて喉を犯した。彼の目は次第は虚ろになり焦点が合わなくなっっていった。
『活性液の摂取を確認。子宮の生成を確認。催淫作用を確認。天花神の受精プログラムに移行します。』
受精……?子宮……?彼は男だぞ。何を……言っているんだ。
『御廻刑治様には天花神(てんかじん)の子を産んで頂きます。』
「、……?」
御廻刑治の朦朧とした頭はその言葉を処理できなかったらしい。触手が引き抜かれても咳き込んだ後は暫く液体を口端から垂らしたまま放心していたが、次第に熱くなる体と上がる息に遂に気づき目を見開いた。
「ぁ……あァ……、やだ……いやだ」
触手は獲物にまだ理性が残っていることを確認すると、再び粘液を溢れさせて口に近づいてくる。
「いやだ、……いやだ、やめろよ……はなせ、はなッ、゛ッ……、ンッ……!!」
必死に暴れるが全力の抵抗も触手に宙に行かされた体では叶わない。そうしている間にも次第に催淫作用が高まってゆく。彼は再び頭がまわらなくなっていった。
子を……、産む……?なんだ、なんだよそれ。皆言葉を処理出来ずに固まっている。
『あなた方は地上のあやしびとですが、任務を遂行することにより特例で天上世界に迎え入れられるのです。光栄ですね。良かったですねぇ』
何のことだ……?天上世界?天花神?だが俺達が混乱している間にも“任務”は始まってしまった。
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