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第二夜
執行者
しおりを挟む円卓に俺の前だけ穴があき、そこからPUSHと書かれた赤いボタンが出てくる。
「何を……させる気だ」
『ただ、押していただくだけです』
「押したらどうなんだ」
『処刑が執行されます』
冷淡な声が広いホールに響く。
「……あんまりだ」
美坂さんが吐き捨てるように言った。
……前をむく。丁度向かい側の席の御廻刑治は浅い息の間に独り言を繰り返している。眼鏡の奥の黒い瞳は瞬き一つしないで血走っていた。
俺は目を閉じる。
……これは俺の責任じゃない。全員で決めたことだ。薬師丸さんも言っていたじゃないか。それに俺を含め全員誘拐犯の被害者なんだ。俺のせいじゃない。ボタンを押したって、仕方がないんだから、そうするしかないんだから、俺は悪くない。それにあいつは狼に違いないんだから、俺は、悪くない。悪くないんだ……
俺はボタンにそっと手を伸ばす。滑らかな肌触り、プラスティックの冷たさを感じる。
「や、山田君、さっきは、悪かったよ……!ほんと、あんなこと思っても無かったんだ……!!」
必死な声に思わず目を開けてしまう。ズレた眼鏡に乱れた黒髪、滴る汗と必死に作った笑顔は悲痛以外の何物でもない。
「山田君……!!なあ、頼むよぉ……俺、来月結婚する人がいるんだよ……!!指輪も買ってて、あ、ダイヤのペアリングなんだけどね?ちょっと奮発して買っちゃって、まだローンもあるんだよね、あはは…………」
「っ……、」
……悲痛な叫びに皆目を背けている。俺もそうできたら、どんなに良かったか。
「なぁ……頼む、頼むからさぁ……」
せめて、俺は目を背けずに
「ごめん、なさい……」
ボタンを、押した。
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