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第二夜
処刑候補筆頭
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「.......っ、くそ」
俺は拳を握りしめて席に腰を落とした。悔しさと恐ろしさが胸を満たす。.......“見ていれば”。つまり、今日“処刑を見ている立場なら”分かると言いたいのだろう。.......誘拐犯はさっきの会話を聞いていたのだろうか。ああ、なら随分と皮肉めいたことを言われたもんだ。だって
「.......自分は、今日言うことが、あります。ええ、」
.......今日は俺が“見られる立場”候補筆頭になるんだろうから。
「あ、その、私は御廻刑治というしがない警察官でして.......」
御廻さんは自分の真上に名前と職業が表示されていることを忘れたのか、律儀に自己紹介を始めた。.......相当疲弊しているみたいだ。よく見ると目の下の隈が酷くなっている気がする。顔色も悪い。
「何、さっきの話聞いてなかった?名前はてめぇの上にデカデカと書いてあんだから、さっさと言えよオッサン」
赤髪の彼──拳坂炎矢は不機嫌そうに背もたれに寄りかかった。彼は高校生らしい。この中で多分唯一の年下だろうな。だが反発気質らしく、発言数はトップクラスに多い。発言が重いこの議論において、彼は結構重要な人物かもしれない。
「ただでさえこんな状況なんだ。無闇に荒波を立てて険悪な関係になったらそれこそ誘拐犯達の思うつぼじゃないか。ここは静かに聞くべき時だよ、拳坂くん。どうぞ続けて、御廻さん」
セットされた金髪の彼──美坂輝がそう言うと、拳坂はふんと鼻を鳴らした。美坂輝の職業はホストらしい。確かにそれらしい服装と美貌だ。
それに、確か彼は昨日も拳坂のことを窘めていた気がするな。職業柄、コミュニケーションを円滑に進めることに長けているみたいだ。
「え、えぇ。どうも.......。それで、言いたいことと言うのはですね。」
御廻さんは軽く会釈して咳払いをした。少し口ごもっている。
「そ、そこの彼.......山田はじめさんが狼ではないかと」
.......来た。ここからが、最初の正念場だ。
「.......人を疑うには根拠があるんだろうな」
後ろで黒髪をお団子にした長身の彼―海画春次は静かに問うた。職業は画家と映し出されている。口少なな彼はどこか職人気質な印象を受ける。
「え、えぇ。もちろん。」
御廻さんは少し怯みながらも、俺への糾弾を始めた。
俺は拳を握りしめて席に腰を落とした。悔しさと恐ろしさが胸を満たす。.......“見ていれば”。つまり、今日“処刑を見ている立場なら”分かると言いたいのだろう。.......誘拐犯はさっきの会話を聞いていたのだろうか。ああ、なら随分と皮肉めいたことを言われたもんだ。だって
「.......自分は、今日言うことが、あります。ええ、」
.......今日は俺が“見られる立場”候補筆頭になるんだろうから。
「あ、その、私は御廻刑治というしがない警察官でして.......」
御廻さんは自分の真上に名前と職業が表示されていることを忘れたのか、律儀に自己紹介を始めた。.......相当疲弊しているみたいだ。よく見ると目の下の隈が酷くなっている気がする。顔色も悪い。
「何、さっきの話聞いてなかった?名前はてめぇの上にデカデカと書いてあんだから、さっさと言えよオッサン」
赤髪の彼──拳坂炎矢は不機嫌そうに背もたれに寄りかかった。彼は高校生らしい。この中で多分唯一の年下だろうな。だが反発気質らしく、発言数はトップクラスに多い。発言が重いこの議論において、彼は結構重要な人物かもしれない。
「ただでさえこんな状況なんだ。無闇に荒波を立てて険悪な関係になったらそれこそ誘拐犯達の思うつぼじゃないか。ここは静かに聞くべき時だよ、拳坂くん。どうぞ続けて、御廻さん」
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それに、確か彼は昨日も拳坂のことを窘めていた気がするな。職業柄、コミュニケーションを円滑に進めることに長けているみたいだ。
「え、えぇ。どうも.......。それで、言いたいことと言うのはですね。」
御廻さんは軽く会釈して咳払いをした。少し口ごもっている。
「そ、そこの彼.......山田はじめさんが狼ではないかと」
.......来た。ここからが、最初の正念場だ。
「.......人を疑うには根拠があるんだろうな」
後ろで黒髪をお団子にした長身の彼―海画春次は静かに問うた。職業は画家と映し出されている。口少なな彼はどこか職人気質な印象を受ける。
「え、えぇ。もちろん。」
御廻さんは少し怯みながらも、俺への糾弾を始めた。
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