【R18】リアルBL人狼ゲーム

第一夜

最初の犠牲者

『犠牲者の襲撃まであと五分』

 犠牲者……？見慣れない単語に少し思考を停止した数秒後、俺は最悪な結論に気がついて思わず立ち上がった。椅子が床に転がって音を立てる。まて。なぜ気づかなかった。連れてこられたのは10人。部屋は十個。大きな円形の会議テーブルに椅子は……







9個だ。
 屋敷の収容人数は10人。しかしこの対話ゲームの舞台は9人分しか用意されていない。そしてこの犠牲者の文字……当たりの役職。ちがう。一人は、……その真逆だ。

 なぜ気づかなかったんだろう。今日の時点でゲームに協力的な者などいなかった。誘拐犯は明日には自発的に協力的になると言った。しかしそれは人狼に限った話だ。人狼には思想か、はたまた信じたくないが、超自然的な力で自発的になるのかもしれない。誘拐犯はそれを匂わせる発言をした。

 しかし市民陣営についてはどうだ？俺は現に今洗脳されている訳では無いし、誘拐犯も特に言及はしなかった。このまま何事もなく朝を迎えて人狼を“処刑”しろと言われて本気でゲームに参加するか？

 ……これが、恐らく市民陣営の人間を“自発的に”ゲームに参加させるためのイベントなんだ。つまり、見せしめ。不運にも犠牲者に選ばれた一人は問答無用で襲われる。そのライブ中継。悪趣味だ。だが恐ろしく合理的だ。俺は倒れた椅子も直せないで突っ立っていた。

 ……誰が、犠牲者になったんだろう。可哀想、そう考えると同時に、自分ではなくてよかったという気持ちが湧いてくるのが分かる。カウントダウンはみるみるウチに進んでいく。3……2……1……

パッと画面が切り替わった。あぁ、ああ……ああ……。俺は吐いた。これからこの画面が映し出す映像、その予想だけで吐き気が止まらない。