上 下
3 / 45
第一夜

頼りない警察官

しおりを挟む

 急に後ろから声が聞こえて驚く。振り向くと、警官の制服を着た人が立っていた。

「あ、いえ、自分は怪しいものでは……いや、この状況なら誰でも怪しいですかね……、あ、いえ、私は御廻刑治おまわりけいじというしがない警察官でして……」

 なんだかオドオドした感じの男のようだ。歳は20代後半くらいだろうか。髪は短めの黒髪で、少し猫背。一重の目の下には薄ら隈があった。少し頼りなさげな雰囲気を纏っている。

「あ、いえ、俺らもさっき起きたところで……。俺は山田はじめ、こっちは友人の砂浜球太です。こっちは……」

「あ、いえ、失礼ながら先程の話は少し聞いていて……あ、すみません。盗み聞きするような趣味は無いのですが自分は……」

 球太はニカっと笑って手を差し出した。

「よろしくなァ、刑事サン!」

「あ、そのケイジは自分の名前の方でしょうか……?あ、紛らわしくてすみません……」

 刑治さんは困惑しているようだった。まあ起きたら見知らぬ場所に見知らぬ人がいたなんて状況、誰だって混乱するとは思う。にしても言っちゃ悪いが警官としてはちょっと頼りない。

「……あ、いや、その、すみません、自分、警察手帳も持ってなくて、でも、本当にそうなんですよ、えぇと、その……どうしましょう」

「これはまあ、随分と頼りない刑事殿ですねぇ。警察を探してはいましたが、今度は頼れる警察を探さねばならないみたいです。」

 横でやり取りを見ていた雪話さんが涼しい顔をして言う。風流な物言いのくせに辛辣だ。刑治さんは申し訳無さそうに俯いた。

「まあ、いいじゃありませんか。刑治さんは俺達の味方です。今はそれだけ分かっていれば十分でしょう」

「いいこと教えてやるよ龍之介サン。そういう時はマグネシウム取るといいらしいぜ。ソースは母ちゃん。ってことで、よろしくな、刑治サン」

 球太が半笑いで言う。.......また人の神経を逆撫でするようなことを。

「.......えぇ。丁度気がたっていたもので、有益な情報ありがとう存じます。そこのお方も、」

雪話さんは笑顔を崩さないが、絶対怒ってる。

「……あ、はい、よろしくお願いします」

 雪話さんと御廻さんはあんまり相性が良くないみたいだ。そんなことを考えていると、突然スピーカーから爆音が聞こえてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

尻で卵育てて産む

高久 千(たかひさ せん)
BL
異世界転移、前立腺フルボッコ。 スパダリが快楽に負けるお。♡、濁点、汚喘ぎ。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

狐に嫁入り~種付け陵辱♡山神の里~

トマトふぁ之助
BL
昔々、山に逃げ込んだ青年が山神の里に迷い込み……。人外×青年、時代物オメガバースBL。

叔父さんと一緒♡

らーゆ
BL
叔父とショタ甥がヤッてるだけ。ガチのヤツなので苦手なひとは回避推奨。

処理中です...