No.13【ショートショート】YouTuber大虐殺!!!

鉄生 裕

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YouTuber大虐殺!!!

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一番目の被害者は、キュンキュンchというカップルYouTuber。
二番目の被害者は、クッキングッドという料理系YouTuber。
三番目の被害者は、美美美chという美容系YouTuber。
四番目の被害者は、日本ビッグバンという六人組のバラエティ系YouTuber。
五番目の被害者は、旅楽Boyというアウトドア系YouTuber。

これまでの被害者は全部で十一名、殺害現場は彼らの自宅か撮影スタジオ、
殺害時刻はバラバラであったが必ず生配信中に殺害されていた。






「はじめまして。本日あなたを護衛することになった、刑事の芹沢と申します。
こっちは同じく刑事の藤堂です。本日はよろしくお願いいたします」

刑事の芹沢と藤堂は、前々から生配信をすると自分のチャンネルで宣伝していた
ポリポロTVという商品紹介YouTuberの自宅に来ていた。

「ポリポロさんがリビングで生配信を行っている間、私たちはあちらの別室で待機しています。
何かあった際はすぐに駆け付けますので、どうか安心してください」

芹沢と藤堂が別室へ行くと、ポリポロは生配信の準備を始めた。






「それにしても、生配信中に殺すなんて。犯人も物好きな奴ですよね」

二人きりになった別室で、藤堂は芹沢に言った。

「頭のおかしな奴なんて、世の中にはごまんといるからな。
問題は、今までの被害者十一名が未だに見つかっていない事だ。
犯人は被害者達をどこに運んだんだ?」

そうこうしている間に、生配信が始まる時間になった。

生配信は一時間程を予定しており、何事も無く順調に進んでいた。

だが、配信を始めてから三十分程経った時のことだった。

ベランダの窓がパリンと大きな音をたてると、
覆面を被った何者かが大きな黒いバッグを持って家の中へ押し入ってきた。

「芹沢さん!あいつです!」

別室から飛び出した芹沢と藤堂は、
「観念しろ!もう逃げられないぞ!」
覆面に銃を向けながら言った。

だが、覆面は慌てる様子もなく、持っていたナイフをポリポロの首筋に当てた。

「藤堂!配信を切るんだ!」

芹沢にそう言われた藤堂は、パソコンに設置してあるカメラの電源を切ると、
パソコンの画面に表示されていた配信終了のボタンを押した。

「残念だが配信は切らせてもらった。生配信中に殺害するのが、お前のポリシーなんだろ?
お前はもうおしまいだ、諦めてナイフを床に置け」

すると、覆面はなんの躊躇もなくポリポロの首にナイフを突き刺した。

「おい!やめろ!」

芹沢が撃った銃弾は覆面の額に当たり、覆面はそのまま倒れた。

「ポリポロさん!大丈夫ですか!?」

芹沢は首を刺されたポリポロに駆け寄ったが、なにやら様子がおかしかった。

すると藤堂は、
「芹沢さん、これ見てください」
そう言いながら、覆面が持っていたナイフの刃を自分の手のひらに当てて見せた。

彼が持っていたナイフは、おもちゃのナイフだった。

「・・・なんだ、おもちゃかよ」

ナイフがおもちゃだという事が分かり安心した芹沢だったが、
ポリポロは頭から血を流している覆面を見てガタガタと震えていた。

「・・・ちょっと待ってください。ゴム弾じゃなかったんですか?」



芹沢と藤堂が所持していた銃には実弾が入っていたが、
二人はポリポロを少しでも安心させるために、銃の中身はゴム弾だから安全だと嘘をついていた。

「すいません。少しでもあなたを安心させるために嘘をつきました」

その時、芹沢の携帯に彼の上司から電話がかかってきた。

「おい、芹沢!カメラだ!今すぐ部屋の四隅を調べろ!」

上司が何を言っているのか、芹沢は全く理解できなかった。

すると藤堂が、
「・・・芹沢さん!これ・・・、これ見てください!」
青ざめた表情で芹沢に言った。

「なんだよそれ?」

「犯人が持っていたバックの中に入っていたんです」

そこでようやく何かに気付いた芹沢は、部屋の四隅を調べた。

部屋の四隅のうちの二か所には、隠しカメラが設置されていたのだ。

すると、電話の向こうの上司が、
「早くカメラを止めろ!壊してでもいいから今すぐ止めるんだ!ずっと配信されてんだよ!」
と怒鳴るように言った。

藤堂がパソコンに設置してあったカメラを切って配信終了を押した後も、
二台の隠しカメラがずっと一部始終を撮っていた。

そしてその様子は、別のアカウントで生配信されていたのだ。

「おい!これはどういうことだ!まさか、全てお前らが仕込んだっていうのか!?こんなの冗談じゃ済まないぞ!」

芹沢はポリポロの胸ぐらを掴んで言った。

覆面が持っていた大きな黒いバッグに入っていたもの。

それは、大きな文字で『ドッキリ大成功!』と書かれたパネルだった。






今まで起きた殺害事件は、全て彼らの自作自演だった。

再生数が伸び悩んでいた彼らは、越えてはならない一線を越えてしまったのだ。

行方不明になっていた十一名のYouTuberは、都内のマンションにずっと身を潜めていたのだ。

もちろん、覆面の犯人も彼らの協力者だった。



警察は急いですべての映像を削除しようとしたが、隠しカメラで撮られていた映像も含め、
映像はどれも拡散されてしまっていた。

そしてYouTuber達の狙い通り、隠しカメラで生配信されていた一部始終が、
この国での再生回数ランキング一位を独占し続けることになった。
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