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【三周目】

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「それじゃあ、今日はこれで解散にしよう」
そう言うと、ブルーは誰よりも先に基地を出て家へと向かった。
「レッド、顔色が悪いけど大丈夫?」
ピンクが俺の顔を覗き込むようにして言った。
「何でもないよ。俺も今日はもう帰ることにする。それじゃ、また明日な」
俺は三人にそう告げると、急いでブルーの後を追った。
今回もブルーは二周目と同じ道を通って家へと向かった。それはつまり、本来とは異なる道順で家へと向かっているということだ。
またしても本来の過去とは何かが異なっているということは明らかだった。
しかし、ブルー殺害の事実を知っているのは俺だけのはずだ。それにも関わらず、なぜブルーはまたしても本来とは異なる道を通っているんだ?
その事については、今考えたところで答えはすぐに分からないだろうと思った。
それよりも今は、ブルーを見失わずにしっかりと尾行することが最優先だ。
しばらくブルーの尾行を続けていると、彼は人気の無い路地へと入っていった。そして急に立ち止まり、道路に沿って均等に並んでいる電柱を見つめながら、「そこにいるのは分かってる。怖がらなくていいから出ておいで」と言った。
最初はブルーが俺の尾行に気付いて言ったのかと思ったが、どうやら違うようだ。
電柱の陰から一人の少年が姿を現した。
ブルーは少年のもとにゆっくりと近づき、二人で何かを話している様子だった。
二人の様子を遠くから眺めていると、少年が突然ポケットから包丁を取り出してブルーの腹を刺した。
「おい!何やってんだ!」
俺は慌てて二人のもとに駆け寄ると、俺に気付いた少年は逃げるように何処かへと姿を消してしまった。
「おい、ブルー!大丈夫か!?しっかりしろ!」
ブルーの服はみるみる真っ赤に染まっていった。
「安心しろ、今すぐ救急車を呼ぶからな」
俺は上着のポケットに入っている携帯を取り出そうとした。しかし、なぜだかブルーはそんな俺を制止するかのように俺の腕を掴んだ。
「何してんだよブルー!早く救急車を呼ばないと!」
俺は必死にブルーの手を振り払おうとしたが、それでも彼は俺の腕を掴んで離さなかった。
「・・・あの子は、悪くないんだ。・・・あの子は悪くないんだよ」
ブルーはかすれた声でそう言うと、そのまま息を引き取った。
 
日曜日になり、俺はまたしても一人でタイムラーの出現を待った。
「私の言った通りだろう。君がいくら頑張ろうと過去は変えられないんだよ」
異次元から現れたタイムラーは俺の顔を見ると、あざ笑うように言った。
「今度こそブルーを救ってみせる。だからもう一度だけ俺を過去に戻してくれ」
「もう諦めたらどうだい?君に過去は変えられないんだよ」
「ブルーを殺した犯人は分かったんだ。今度はブルーが殺される前に止めてみせる」
「君を過去に送るのは構わないが、君と私が敵同士だということを忘れてはいないだろうね?敵である君の願いを何度も叶えてあげる義理は無いと思うんだが」
「もちろん分かってる。何が望みだ?」
「望み?そんなものは無いよ。君はこの前、一日だけ私の自由に地球を侵略させると約束したね。正直、私にはそんな約束すら必要無いんだよ。君達は私にとって脅威でも何でもない。私の力があれば、こんな星なんていとも容易く侵略できるからね」
「それならどうして、俺達を過去に戻したんだ?」
「君の仲間のブルー、あれはいい男だ。私は彼のことが気に入っているんだよ」
「何を言っているんだ?お前、ブルーを知ってるのか?」
しかし、タイムラーは俺の質問に答えることなく俺を過去へと送った。

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