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縄縛遊戯――じょうばくゆうぎ――
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しおりを挟む「案ずることはない。とりあえず、ついてきたまえ」
天宮くんの手首を優しく掴む。
彼はびくんと体を震わせ、伏せた目元がほんのり赤く染まっていた。その反応がなんとも艶めかしく、僕はすっかり彼の虜になってしまう。
「君にとっても、悪いことじゃない」
僕は彼の手を引いたまま、自分の部屋の襖を開ける。
幸福な事に、僕の部屋は廊下の一番奥にある。誰かが前を通る事は滅多にない。
隣の部屋が天宮くんなので、ちょっとばかし声を上げたところで気付かれはしないだろう。
桶を廊下に置かせ、先に天宮くんを部屋に入れると、僕も続くように後ろ手に襖を閉める。
不安そうな目の色をした天宮くんが、僕の顔を見つめていた。
「楽にしてくれ」
僕は座布団を用意すると、天宮くんに進める。
「やっぱり僕、帰ります」
神妙な顔をした天宮くんが、部屋を出ようとする。
「待ちたまえ。君の事を理解出来るのは、僕だけだと思うのだが」
「……何のことですか」
ぴたりと天宮くんが襖にかけていた手を止めて、ゆっくり言葉を発する。
「一人では何かと限界があるだろう。僕が手伝ってあげよう」
天宮くんがゆっくり振り返る。その顔は血の気が引き、悄然としていた。
「誰にも言ったりしない。それどころか、僕も一緒に共犯者になろう」
僕は唇の端を上げ、君の味方だと言うような表情で天宮くんに近づく。
天宮くんは戸惑うように、襖を背にし俯く。視線が泳いでいて、どうするべきなのか悩んでいるようだった。
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