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しおりを挟む「あのさ……もし、やり直そうって言ったら――」
「随分と打ち解けてみたいだね」
睦紀が言いかけたところで、俊政が笑顔で席に戻ってきてしまう。
「えぇ、今後のことで話し合っていたの」
涼華が答え、俊政は「どんなことを?」と言って腰を据えてしまう。
出鼻を挫かれてしまい、睦紀は続きを言えないまま口を噤む。
「寝室は別にするかってこと。私はあまり帰って来ないし、彼は優しいから気を使うと思うの」
「確かに睦紀はいつも、涼華を心配していたからね。一緒の部屋だと気を使ってしまうだろう。空いている部屋があるから、そっちを使うのも良いかもしれないね。それでいいかい? 睦紀」
俊政の問いに睦紀は頷く。涼華が乗り気ではないと分かり、夫婦関係の修復は難しそうだった。がっかりもしたが、仕方がないようにも思える。
睦紀が了承したことで、俊政からすぐに新しい部屋に案内された。
涼華は要件が済んだから戻ると言って、家を出たようだった。涼華が戻ると口にしたのは、誰か特定の人の所にということだろう。すでに自分は入る余地がないと知り、余計に修復不能であると思えてしまう。
案内された部屋は客室の一つで、十二畳ほどの広さの部屋だった。既にベッドとクローゼットが備え付けられていて、移動するのは衣類や持ち物だけで問題ないようだ。
「すぐにじゃなくてもいいからね。少しずつ移動させればいい。大変であれば手伝うよ」
俊政の申し出に、睦紀は丁寧に断った。そんなに荷物もないので、明日にでも運び入れると告げた。
もともと一人で寝ているようなものだったが、今度は本当に一人で寝ることになるのだ。
ベッドが一つになるというだけで、待つ人がいたというだけで、こんなにも心境が変わってしまうのかと、睦紀は一抹の寂しさを覚える。
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