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しおりを挟む水瀬がそちらに視線を向けると、鳴河が顎を捉え激しく唇を貪ってくる。
「んっ……はぁっ……」
苦しい程に舌を吸われ、聞くことすらままならない。
スマホの振動がいつの間にか止み、やっと鳴河が顔を上げる。荒い息を吐き出している水瀬を見下ろしつつ、上体を起こす。
「理玖さんを悲しませるつもりはなかったんです」
ぽつりと呟き、鳴河が水瀬から身体を離す。
「俺はただ――理玖さんがまた、辛い目にあってほしくなかっただけなんです。でも、結果的に俺が理玖さんを傷つけている」
「それは違うよ……鳴河は悪くない」
水瀬が身体を起こすと、鳴河が寂しそうな顔で微笑む。
「優しいですよね。理玖さんは――でも、俺は理玖さんの本心が知りたいんです。他人のことばかり優先するんじゃなくて」
鳴河が近づき、手に持っていたバスローブの紐で水瀬の両手を結んでいく。
「理玖さんはまだ、あの男のことが好きなんでしょ? 俺のせいで別れなきゃいけなくなっただけで」
重なるように結ばれた両腕を上げられ、ベッドヘッドにくくりつけられる。普段であれば込み上げるはずの熱が、今は困惑するばかりだった。
確かに久賀との関係は不本意に終わってしまっている。だけどそれが全て、鳴河のせいであるとは水瀬には思えなかった。
水瀬がそう返そうと口を開き掛けた瞬間、部屋のインターホンが鳴る。
瞬時に身体が硬直した水瀬に対し、鳴河はベッドから降りてしまう。
「鳴河?」
水瀬の呼びかけに鳴河が振り返る。一瞬、苦しげな表情をした後、何も言わずに玄関へと向かってしまう。
水瀬は縛られた腕を必死で動かす。誰が来たか分からなかったが、こんな姿を見られるわけにはいかなかった。
だが、どんなに力を入れても腕が痛む一方で、結び目は堅く閉ざされたままだ。
「水瀬っ」
突然駆け寄ってきた久賀の姿に、水瀬は瞠目する。
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