愛に縛られ、愛に溺れる

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　案内されたレストランで食事をし、鳴河が時計を確認した所で行きましょうかと促される。
　いつもならゆっくりと食事をするはずなのに、早々に立ち上がる鳴河に水瀬は疑問を抱く。
　支払うという水瀬を押しとどめ、鳴河が支払って外に出る。再び駅に向かっているのに気付き、このまま帰るのかと水瀬は戸惑う。
　期待しているわけじゃなくとも、最後だというのに淡泊な態度にショックを受けている自分がいた。

｢理玖さん｣

　ぼんやりと歩いていると、鳴河がいつの間にか立ち止まっていた。

｢大丈夫ですか？｣
｢うん……ごめん｣

　水瀬が謝った所で、鳴河が｢こっちですよ｣と言って目の前のホテルを示す。洒落た大きなホテルを前に、無意識に心臓が跳ねた。

｢行きましょう｣

　尻込みする水瀬の背を鳴河が押す。
　鳴河が受付でチェックインすると、二人でエレベーターに乗り込む。終始無言のまま、指定された部屋をカードキーで鳴河が開け、中に入る。
　入ってすぐがベッドではなく、テーブルにソファー、テレビが置かれていた。奥が寝室になっているようで、広い間取りからしてかなり良い部屋を取っていたのだと分かる。

｢先にシャワー浴びてきてください｣

　水瀬がスーツのジャケットを脱いだところで、鳴河がやっと口を開く。
　少しだけ浮かない表情の鳴河に、水瀬は問うか迷ったが、結局そのまま浴室へと向かった。
　シャワーを浴びてバスローブに身を包むと、水瀬は部屋へと戻る。
　鳴河はベッドに腰掛け、スマホに視線を落としていた。声をかけるのに戸惑っていると、鳴河が顔を上げる。

｢俺も入ってきますね｣

　入れ違いに鳴河が浴室へと向かう。
　妙に喉が渇き、水瀬は小さな冷蔵庫を開く。そこにはペットボトルの水が入っていて、ほっとしながら手に取った。
　水を飲みながらベッドに腰掛け、大きく息をつく。