愛に縛られ、愛に溺れる

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「理玖さんは、毒味役みたいなものなんで。気にしないでください」

　そう言われても、バイトしているような学生に金を出させるのは申し訳なかった。そう水瀬が言うも、あっさり鳴河に躱されてしまう。

「実家ぐらしなんで大丈夫です。それに自由がないんで、理玖さんの家で息抜きさせてもらってるようなもんなんです」

　強情な鳴河に、水瀬も折れるしかなかった。
　鳴河が水瀬の家に訪れては食事を作り、一緒に食べて帰るという日々が続いた。さすがに毎日は難しくとも、週に四回は来ていたように思える。
　いつの間にか、鳴河が来るのが当たり前のようになっていて、最初の遠慮はなくなりつつあった。だが、さすがにお金を出させ続けるわけにはいかない。一週間立つ頃に水瀬は、お金を出させてくれないなら家に入れないと切り出した。鳴河は不承不承だったが、半額だけ受け取ってくれるようになった。
　飽きもせずに足繁く通う鳴河に、水瀬は呆れながらも心待ちにするようになっていた。家に一人でいると、空っぽの棚を見ては満谷のことを思い出してしまうからというのもある。
　それに貯金が底を尽きている今、贅沢は出来ない。だからこそ、外食をしなくとも美味しい食事と楽しい会話が出来る鳴河の来訪はありがたかった。
　そんな食事仲間のような関係が一変したのは、鳴河が通い始めて三ヶ月経った夏の終わり頃。
　いつものように鳴河からの連絡で来訪を知らされ、水瀬は書きかけの卒論の続きをノートパソコンで打ち込んでいた。
　すでに内定は決まっていたこともあって、残すは卒業論文のみという段階だった。これさえ仕上げれば、とりあえず肩の荷が下りる。ギリギリで提出するような結果にならないように、水瀬は早い段階から取りかかっていた。
　ノートパソコンに向かいつつ、手元にある資料をまとめているとインターホンが鳴った。