愛に縛られ、愛に溺れる

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「それより、話をしませんか？」

　鳴河の言葉に水瀬は頷く。何を告げられるのか、不安と警戒から心臓が激しく打つ。
　リビングで話をするのかと思っていた水瀬だったが、鳴河に連れられたのは寝室だった。

「そこに座ってください」

　ベッドを示され、水瀬は立ち尽くす。

「……ここじゃなきゃ、駄目なのか？」

　机の前に立ち、引き出しから何か出している鳴河の背に問う。

「恋人に気を遣ってるんですか？　それとも、俺に襲われるんじゃないかって、警戒してるんですか？　随分と俺のこと、信用してくれてないみたいですね」
「……ごめん」

　そこまで言われてしまうと、申し訳なさから水瀬はベッドに腰掛けざるを得なかった。
　水瀬が居心地悪げに浅く腰をかけると、鳴河が封筒を手に持ちつつ隣に腰を下ろす。

「今の恋人は大丈夫なんですか？　俺を捨ててまで得た恋人は、ちゃんと理玖さんを満足させてくれているんですか？」

　明らかに棘のある言い方に、水瀬は息を呑む。

「黙って消えたのは……悪かったって思ってる」
「俺は心配なんです。また、理玖さんが酷い目に遭わされるんじゃないかって……恋人は二度と作らないって制約を設けるほどに、あの頃の理玖さんは、酷く傷ついてたんですよ」
「久賀さんは僕を裏切ったりしない。仕事でも尊敬出来る上司だし、プライベートでも僕を大切にしてくれている。それに傷つくのを恐れていた僕に、二度とそんな思いをさせないって……約束してくれたんだ」

　久賀の事を疑われ、水瀬は心外だとばかりに言い募る。

「へー。そんなにいい人なんですか」

　鳴河の冷めた声に、水瀬は息を詰まらせる。

「でも、本当に約束を守ってくれるかなんて、分からないじゃないですか。だって、以前の恋人だって、理玖さんと何度も約束してたじゃないですか。人間、口では何とでも言えるんです。彼がそれを一生涯、守ってくれる保証なんてないんですよ」

　鳴河が目を細め、水瀬に迫る。