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「理玖さん」
いつの間にか落としていた視線を上げると、鳴河の隙の見られない視線
と重なる。これ以上黙り込んでいても、鳴河は引くようには思えない。執念深く、納得のいく答えが得られるまで追求する姿は、以前から変わっていないはずだ。現に六年もの歳月が流れているにもかかわらず、どういう手を使ってか水瀬の前に現れているのだから。
「好きかもしれないって、気づいたから――」
鳴河の指の動きがぴたりと止まる。
「好きになってくれてたんですか? それなのに……なんで」
「好きだって気持ちを隠しながら、傍に居続けるのが辛かったんだ。当時の僕は恋人を作らないって決めてたから」
「そんなのずるいですよ。俺、言いましたよね。好きになって貰えるまで待つって」
鳴河の声に険が滲む。怒るのは当然だった。水瀬がトラウマを抱える程の失恋をし、失意にくれていた時に支えてくれたのは鳴河だ。恋人として傍で支えたいと言ってくれた鳴河に、恋人を作る気はないと言って断っていた。それでも鳴河は、セフレという形で水瀬を支えてくれていた。
「俺はあの頃の気持ちと何も変わっていません。今でも理玖さんの望みを叶えられるのは、俺だけだと思っていますから」
「気持ちは嬉しいけど……ごめん」
鳴河に対して罪悪感はある。それでも久賀と付き合っている今、鳴河の気持ちに応えることは出来ない。
「そうですか……でも、友達からなら良いですよね?」
深い溜息を吐いた後、鳴河はそう言って手を引いた。離れてもなお手の感触は残ったままだ。まだ鳴河に対して未練があるのだろうと、水瀬は苦い思いがした。
「連絡先、教えてもらえますか」
「……分かった」
スマホを取り出し、連絡先を交換すると鳴河の方から「そろそろ出ましょうか」と告げられる。
いつの間にか落としていた視線を上げると、鳴河の隙の見られない視線
と重なる。これ以上黙り込んでいても、鳴河は引くようには思えない。執念深く、納得のいく答えが得られるまで追求する姿は、以前から変わっていないはずだ。現に六年もの歳月が流れているにもかかわらず、どういう手を使ってか水瀬の前に現れているのだから。
「好きかもしれないって、気づいたから――」
鳴河の指の動きがぴたりと止まる。
「好きになってくれてたんですか? それなのに……なんで」
「好きだって気持ちを隠しながら、傍に居続けるのが辛かったんだ。当時の僕は恋人を作らないって決めてたから」
「そんなのずるいですよ。俺、言いましたよね。好きになって貰えるまで待つって」
鳴河の声に険が滲む。怒るのは当然だった。水瀬がトラウマを抱える程の失恋をし、失意にくれていた時に支えてくれたのは鳴河だ。恋人として傍で支えたいと言ってくれた鳴河に、恋人を作る気はないと言って断っていた。それでも鳴河は、セフレという形で水瀬を支えてくれていた。
「俺はあの頃の気持ちと何も変わっていません。今でも理玖さんの望みを叶えられるのは、俺だけだと思っていますから」
「気持ちは嬉しいけど……ごめん」
鳴河に対して罪悪感はある。それでも久賀と付き合っている今、鳴河の気持ちに応えることは出来ない。
「そうですか……でも、友達からなら良いですよね?」
深い溜息を吐いた後、鳴河はそう言って手を引いた。離れてもなお手の感触は残ったままだ。まだ鳴河に対して未練があるのだろうと、水瀬は苦い思いがした。
「連絡先、教えてもらえますか」
「……分かった」
スマホを取り出し、連絡先を交換すると鳴河の方から「そろそろ出ましょうか」と告げられる。
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