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しおりを挟むあれから半年経つも、久賀は約束は違えることはなかった。
いつも水瀬を気遣い、喜ばせようと奮闘してくれている。現に水瀬の眼下に沈む、ガラス越しの都会の街並みは輝く花々のように美しい。ルームサービスで食べた食事も、どれも口に合うものばかりだった。
幸せだ。そう思う。それなのに胸中では、どこか複雑な気持ちもあった。
久賀ばかりに負担を強いているように思えて、どうにも落ち着かない。 窓ガラスに映る自分の顔はどこか浮かない表情だった。
「水瀬」
背後で声をかけられ、水瀬は我に返る。
振り返ると腰にタオルを巻いただけの久賀が、浴室から部屋に戻ってきていた。
服の上からでは分からなかった引き締まった上半身。濡れた艷やかな黒髪。自分を見つめる色欲を帯びた眼。何度見ても、胸が高鳴ってしまう。
水瀬は窓辺から離れて、久賀に近づく。
ベッドに腰を下ろした久賀に倣うように、水瀬も隣に腰掛ける。
「水瀬、いいか?」
お伺いを立ててくる久賀に、水瀬は苦笑して頷く。わざわざ聞かなくても良いのにと思う反面、紳士的な対応は久賀らしいとも思えた。
久賀が照明を落としたのを皮切りに、水瀬は自ら顔を寄せて唇を重ねた。
最初は触れ合わす程度だったが、久賀の方から肩を抱きながら舌を差し入れてきた。
答えるようにベッドに背を倒し、水瀬もそれを受け入れる。濡れた舌先で口腔を探り合い、次第に息が荒くなっていく。バスローブの紐を解かれ、隙間から差し込まれた久賀の手が水瀬の上半身を弄る。
「んッ……」
小さく喉を鳴らす。水瀬が反応したことで、久賀の愛撫が大胆になる。全体を探っていた指先が、胸の突起を集中して攻め立てる。それでも荒々しさはなく、あくまでも繊細にだ。それがもどかしく、水瀬は「久賀さん」と呟く。
喉元まで出かかった、もっと強くしてほしいという言葉は飲み込んだ。
「嫌か?」
久賀が顔を上げた。間接照明の仄暗い視界の中、久賀の精悍な顔に陰影を落とす。
「嫌じゃないです」
水瀬が答えると、久賀が上体をずらし水瀬の胸に舌を這わせる。
「ぁ……ッ」
濡れた感触に、下肢が熱を帯びる。じっくりと愛撫され、今度は下肢に久賀の手が触れた。下着越しに触れられ、一気に情欲がこみ上げる。
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