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しおりを挟む「今回のミスの原因は明らかに気の緩みからだ。双方にきちんとした確認を怠らなかったら、こういったことにはならなかったんじゃないのか」
久賀は突っ込むことはせずに再び視線を柏原に戻し、淡々と口にした。
「はい……今後は最終確認を含め、メールと電話の両方で行うようにします」
柏原がそう口にし、再び平謝りした。
「……今日はもう帰って良い。休み明けには始末書を出すように」
それだけ言い残し、久賀は自分の座席に向う。
「本当にすみませんでした」
久賀の背に向かって頭を下げる柏原を促し、水瀬は自分たちの座席に戻る。
その際、水瀬はちらりと視線を久賀に向ける。一つ離れたディスクで、久賀はパソコンに向かっていた。
「水瀬さんもご迷惑おかけして、本当にすみませんでした」
「いいから。次はミスしないようにね」
荷物を纏めつつ、水瀬は明るく返す。甘い、と言われるかもしれないが、怒られている人を慰める役も必要だと思っていた。
「早く帰りな。僕はトイレに寄ってから帰るからさ」
いつまでも帰りずらそうにしている柏原を水瀬は促す。
「……わかりました。お先に失礼します」
一緒に出ないことを詮索する余裕がないのか。柏原は久賀の元に行き挨拶をすると、鞄を手に取り事務所を出て行った。
しばしの静寂の後、水瀬は鞄を片手に久賀に近づく。
「お疲れ様でした。久賀さん」
「……どうして水瀬がここにいるんだ?」
久賀がパソコンの画面を落として立ち上がる。水瀬の顔を見るなり、僅かに眉尻を下げた。
「すみません……つい、放っておけなくて」
「水瀬には関係ないことだろう。お前まで謝る必要はない」
「そうですけど……ただ、傍観者って訳にはいかないじゃないですか」
謝るのを見ているだけなら、いる意味が無い。それに一緒に謝れば柏原も二度と、迷惑をかけないようにと気を引き締めるはずだった。
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