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第十四章
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しおりを挟む卑猥な色が点々と灯っている通りを、松原は足早に突き進んでいた。まだ営業している店が少ないせいか、人の姿はまばらだ。
まさか自分が色恋沙汰に溺れ、この場所に何度も足を向けるだなんて思ってもみなかった。
父親の気持ちもわからなければ、世の男のこういった風俗事情にも嫌悪の念しか抱けずにいた。
それが今では、店の女どころか男に恋をしている自分がいる。それでも好きなのだから、どうしようもない。
キミヨから電話があったのは、一通りの営業周りを終えて、部署で提案資料に目を通している時だった。
知らない番号からの着信に訝しくも思いつつ電話に出ると、ぶっきら棒な口調で「店に金魚を引き取りに来て欲しい」と告げられた。
つい先日、ハルヤの気持ち次第だが、自分が彼を引き取りたいという話をキミヨにしに行った。そんなことをする必要はなかったかもしれないが、自分の誠意を少しでも分かってもらいたかった。その際にハルヤに絡んできた男の話をしていて、何かあったら連絡してくれても構わないとは言ってある。
でもそうではなく、金魚の引き取りを求める内容だった。
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