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第七章
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しおりを挟む「二、三日したら水槽に移しても問題ない。ただ、バケツの水は入れない方がいい。お店の水は、必ずしも菌がいないわけじゃないからな。金魚だけを水槽に移すんだ」
そう言いつつ、松原は紙袋から餌を取り出す。
「少しなら餌をあげてもいい」
手を出してと言うと、ハルヤが両手を差し出した。その上に少しだけ人工餌の粒を乗せる。
「餌をやるときが一番楽しい」
「わかります」
ハルヤは目を輝かせ、頷いた。さっきの険悪な空気が僅かに和らぐ。
ハルヤが腰を下ろすと、そっと水面に餌を落としていく。
水面を漂っていた金魚たちが、沈みゆく餌に気づき口をパクパクと動かしながら水面を駆け巡る。
優雅な朱色の尾ひれが、縦横無尽に動き回る姿は美しかった。
「綺麗だな」
「そうですね」
「いつまでも見ていられる。可愛らしくもあるし、優雅だ」
ついついハルヤと一緒に、夢中になって目で追っていた。ふとした拍子にちらりと隣を見ると、ハルヤも頬に笑みが浮かべていた。
彼とだったらこうして、穏やかな気持ちで愛でることができるかもしれない。そう思うと、このまま引き下がるのは惜しい気持ちがこみ上げてしまう。
「……また、来てもいいか?」
「えっ?」
驚いた表情でハルヤが、松原の方を向く。
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