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第七章
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しおりを挟むすっかり所定の時間を押してしまったようで、何度か鈴の音が外から聞こえてはいた。それでも途中で止める気は起きるはずもなく、松原は涙を零して嬌声を上げる春夜を揺さぶり続けた。
自分の中ではこれが最後、というつもりはなかったが、ハルヤの方は自分を突き放そうとしている。
それが本心なのか、それとも本音を隠そうとしているのか。探るように、何度も好きだと囁きもした。ハルヤの方も、自分もだとは言っていた。ただ彼の口からは、好きだという明確な言葉は一度も出なかった。
「延長料金はちゃんと払う」
そう言いつつ支度を済ませた松原は、着物を着付けているハルヤに近づいた。
「時間配分がうまくできなかった僕にも原因はあります。お代の方は、最初に払っていただいたので充分です」
ハルヤはそう言って、姿見の前で着物の襟を整えている。
「わがままを言ったのは俺だ。君は何も悪くない」
「そういうわけにはいきません」
厳しい表情のハルヤを、松原は背後から抱きしめる。
「……君を諦められそうにないんだ」
胸のうちから湧き上がる強い嫉妬心。自分がこの場を立ち去れば、彼は遅かれ早かれ別の男に抱かれる。
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