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第六章
7
しおりを挟む空いている二リットルのペットボトルと、バケツに水を汲むと部屋へと戻った。
松原はそれを受け取ると、金魚鉢の中に水を注ぎ、その中にキャップで計った液体を入れていく。同様にバケツにも液体を図って入れていた。
「水道水は塩素が含まれているから、必ずカルキ抜きしなきゃいけない。水を替える際は、分量通りにこの薬液を入れた水を使うか、日光に一日当てた水を使う」
松原は説明しながら腕まくりし、手で軽く水をかき混ぜていく。バケツの方にも同じようにすると、金魚の入った袋をそっと浮かべた。
「急な温度変化が命取りだから、こうして置くことで、徐々に温度が一定になるんだ」
ハンカチで濡れた手を拭きつつ、松原は春夜に近づいた。
「……準備はした。二階に行こう」
松原の表情は険しく、口調も堅い。
嫌なら抱かなきゃ良い。ここに来なければ良い。どうして高い金を払い、抱けもしないのに金魚を渡したいがために、抱くだなんて口にするのか理解できなかった。
「馬鹿にしているんですか?」
思わず口にしてはっとするも、もう後には引けなくなった。
襖に手をかけていた松原が振り返る。
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