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第六章「帰省」
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しおりを挟む神近くんは一人、参道を竹箒で掃いていた。息を切らして階段を上がった僕は、その光景を少し離れたところから見つめる。
黙々と掃き掃除をしている神近くんは、表情が心なしか穏やかに見えた。茶色い髪がフワフワと風に靡き、耳のピアスが朝日にキラリと光る。なんだかこの風貌は、この場には少しちぐはぐに見えてしまう。
「神近くん」
ゆっくりと近づいて声をかけると、神近くんが手を止めて顔を上げると僅かに眉を寄せた。
「……まだ寝てても良いんですよ」
「邪魔だった?」
「別に……問題ないですけど」
そう言いつつも、唇を結び視線を逸らす。僕はギュッと拳を作り震える手を黙らせると、ゆっくりと口を開く。
「……今日、お祭りなんだよね。来たかったなぁー」
参道に立ち並ぶ屋台に視線を流し、僕は肩を竦めてみせる。心臓はバクバクと打ち鳴らし、緊張で僅かに語尾が上擦ったように感じた。
「なら、もう一泊しますか?」
「えっ? でも……」
「別に良いですよ。焦って帰る必要もないでしょうし」
神近くんが僕から背を向けると再び手を動かし始め、サッサッと軽やかな地を履く音が静かに周囲に響いていく。
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