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第六章「帰省」
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しおりを挟む「人に親切にしたり、悲しみを共有することは決して悪い事じゃないけど。ただね、自分をしっかり持たないと、巻き込まれちゃうこともあるから気を付けてね」
僕は自分をしっかりもって生きていこうと、心に決めるように深く頷いた。お父さんは
「大丈夫そうだね。お疲れさま」と言って、無事にお祓いが終わった事を告げたのだった。
部屋から出た僕たちに「明日はお祭りがあるから良かったら二人でおいで」と言って、まだ準備があるお父さんはそのまま外に出る方とは別の方向へと立ち去っていった。
二人で本殿を出ると祭りの準備が着々と進められているようで、さっきよりも屋台らしい屋台が出来上がっていた。
「綿菓子もあるよ。神近くん」
「先輩ぐらいですよ。この歳で綿菓子如きで騒ぐのは」
神近くんはさっきより顔色もよく、呆れた口調ながらも頬が少し緩んでいた。僕のお祓いが終わったことで、ホッとしているのだろうか。僕もすっかり気が緩んでいて、参道の両脇に立ち並ぶ屋台を見てははしゃいでしまう。
「ねぇ、明日帰るんだよね?」
「そうですよ」
「じゃあ、お祭り来れないね」
少し残念そうな口ぶりで言う僕に、「じゃあ先輩だけ遅れて帰れば良いじゃないですか」と嫌味を言われる。
「それはちょっと……」
僕は名残惜しさを感じつつも、先を行く神近くんを追うように石階段を降りていく。
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