上 下
170 / 259
第六章「帰省」

12

しおりを挟む

「先輩」

 肩を揺すられ名前を呼ばれた事で、ハッとして神近くんに視線を向ける。

「そんな怯えた野良犬みたいな顔しないでください。一先ずは祓えれば、後は本体を何とかすればいいだけです」

 神近くんも人の事言えた状態ではないのに、彼なりの励ましなのだろうと考えると僕は少しだけ嬉しかった。

「ありがとう。ここまで連れてきてくれて」

「別にいいです。いつまでもギャンギャン騒がれたんじゃあ、困りますからね」

 憮然とした表情で視線を逸らした神近くんに対して、照れてるんだと僕が苦笑いしていると、そこにさっきよりも仰々しい格好をした神近くんのお父さんが現れた。

 テレビで見た陰陽師の様な、烏帽子に薄紫色の袴。手には笏を持ち、引き締まった表情で僕たちと向い合う。

 僕は立ち上がると「よろしくお願いします」と頭を下げる。こういう時の作法などあまり分からず、お父さんの指示を聞きつつも、緊張した面持ちで事を進めていく。

 白い紙がいっぱいついたフサフサが頭の上を行き来する際は、あっ、テレビで見たことがあると不覚にも考えてしまう。

 思いの外早く終わったと感じたのは、終始の緊張感と物珍しさからだったのかもしれない。最後にお父さんからお札とお守りを渡され、僕は礼を言って受け取った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...