君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第六章「帰省」

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 相変わらずむっつりと黙り込む神近くんに、思春期特有の反抗期なのかなと自分の事は棚に上げて微笑ましく思えてしまう。

 お礼を言ってお兄さんと別れを告げると、僕は神近くんの後ろについて大きな日本家屋の玄関を潜る。

「大きい家だね」

 広い玄関の正面には長い廊下が伸びていて、左右には襖の開いた部屋が点在しているようだった。僕の家よりも何倍も広い家に、自然と口が開いてしまう。

 そんな僕に気にも止めず神近くんが無言で靴を脱いでいると、ちょうど年配の女性が奥の部屋から出てくるなり目を丸くした。

「あらっ! 駅に着いたら連絡しなさいって言ったのに」

 神近くんの母親だろうか。自分の母親より幾分か歳が上に感じられるが、落ち着いた雰囲気と綺麗な顔立ちだ。綺麗な二重瞼にスッと通った鼻筋が、神近くんに似ている。

「あっ、智代のお友達よね。話は聞いてるわ。ゆっくりしていってね」

 僕に視線を向けると、スッと目を細め優しげな声音で言った。

「ありがとうございます。お世話になります」

 僕が頭を下げると神近くんは「時間がないので早く行きますよ」と言ってサッサと上がり込んでいく。

「せっかちな子ねぇ」

 神近くんの背に向かって、お母さんが盛大に溜息を吐き出した。

「あ、すみません。お邪魔します」

 どんどん行ってしまう神近くんに、僕は慌てて靴を脱ぐと後を追いかける。
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