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第五章「計画」

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「じゃあ、いらないですか?」

 神近くんがエアコンを起動させつつ、僕にちらりと視線を向けてくる。欲しくないはずがない。今までに何度も神近くんが来るまで、暑い廊下で待たされたのだから。

「欲しい」

「最初っから素直にそう言ってください」

 椅子に腰かけた神近くんが、背もたれに寄りかかり深い溜息を吐き出す。僕も向かいの椅子に腰掛けると、ハンカチで汗をぬぐっていく。

「先輩」

「んっ?」

「鐘島先輩を納得させる、手っ取り早い方法があるんですけど」

 神近くんが机に頬杖をついて、僕を見つめる。そんな方法があるんだったら、是非とも知りたい。

「えっ? なに?」

 僕が驚いて身を乗り出すと、神近くんも腰を上げ僕の頬に手を当てた。ぐっと近くなった距離感に、僕の心臓が跳ね上がる。

「見せつけてやれば良いんですよ。俺たちの関係を」

 神近くんが悪戯っぽく口元を歪め、僕の唇に指を這わせていく。

「えっ、いや、それはっ……」

 僕は驚きと恥ずかしさに、やっと下がりつつあった体温が再び上がってしまう。慌てて身を引くと、椅子にドシッと座り込む。あのままでは本当に、キスでもされてしまいそうな雰囲気だった。

「照れてるんですか?」

「照れない方がおかしいから……」

「手っ取り早いと思うんですけどね」

 神近くんはつまらなそうな表情で、窓の外に視線を向けた。

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