君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

文字の大きさ
上 下
76 / 259
第三章「訪問」

14

しおりを挟む
「……ドア開けて中に入ってこられても困るんですけど」

「えっ……でも……」

 これじゃあ、八方塞がりだ。戸惑う僕の腕を神近くんは引くと、部屋に連れ戻される。

「泊まっててください」

「えっ?」

 僕は驚いて目を見開く。神近くんは僕とは目を合わせようとしないで、居心地悪そうに視線を下に向けていた。

「でも……僕なんかといて嫌じゃないの?」

「逆に先輩はどうなんですか? 俺といたら、こんなんばっかですけど」

 神近くんの茶色の瞳が、やっと僕に向けられる。ここでの答え次第で、今後の神近くんとの関係が変わってくるように思えてならなかった。怖いし、内心は今すぐにでも帰りたい。できることなら瞬間移動で帰りたい。でも神近くんとの関係をこれ以上悪化させるのも嫌だった。

「僕は……嫌じゃないよ。だって神近くんなら僕を守ってくれるでしょ?」

 真剣な表情で神近くんに告げてから、僕はハッとして失態に気づく。これじゃあまるで、神近くんに頼り切っているようじゃないか。僕は全身が沸騰したかのように熱くなった。

「やっ……ちがっ……」

 僕が慌てて訂正しようにも、神近くんはきょとんとした後に、お腹を抱えて笑い出す。

「先輩面したり、甘えてきたり……ほんと、先輩って面白いですね」

 神近くんそう言って笑い続ける。そのあどけない表情に、僕の緊張も緩んでいく。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

神は絶対に手放さない

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:50

ひとりぼっちの嫌われ獣人のもとに現れたのは運命の番でした

BL / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:522

ライバルキャラですが、俺は貴方が好きです。

eit
BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:104

心霊現象相談事務所

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:22

年下の夫は自分のことが嫌いらしい。

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:220

ホラーゲームに転生なんて聞いていない

BL / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:212

【完結】逆行騎士は己の意志を貫きたい

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:38

転生場所は嫌われ所

BL / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:19

悪魔を知る者

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

嫌われた王と愛された側室が逃げ出してから

BL / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:224

処理中です...