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第三章「訪問」

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「……ドア開けて中に入ってこられても困るんですけど」

「えっ……でも……」

 これじゃあ、八方塞がりだ。戸惑う僕の腕を神近くんは引くと、部屋に連れ戻される。

「泊まっててください」

「えっ?」

 僕は驚いて目を見開く。神近くんは僕とは目を合わせようとしないで、居心地悪そうに視線を下に向けていた。

「でも……僕なんかといて嫌じゃないの?」

「逆に先輩はどうなんですか? 俺といたら、こんなんばっかですけど」

 神近くんの茶色の瞳が、やっと僕に向けられる。ここでの答え次第で、今後の神近くんとの関係が変わってくるように思えてならなかった。怖いし、内心は今すぐにでも帰りたい。できることなら瞬間移動で帰りたい。でも神近くんとの関係をこれ以上悪化させるのも嫌だった。

「僕は……嫌じゃないよ。だって神近くんなら僕を守ってくれるでしょ?」

 真剣な表情で神近くんに告げてから、僕はハッとして失態に気づく。これじゃあまるで、神近くんに頼り切っているようじゃないか。僕は全身が沸騰したかのように熱くなった。

「やっ……ちがっ……」

 僕が慌てて訂正しようにも、神近くんはきょとんとした後に、お腹を抱えて笑い出す。

「先輩面したり、甘えてきたり……ほんと、先輩って面白いですね」

 神近くんそう言って笑い続ける。そのあどけない表情に、僕の緊張も緩んでいく。
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