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第三章「訪問」
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しおりを挟む「問題は、先輩をどう帰らせるかということです」
神近くんは迷惑そうな表情を遠慮なく顔に貼り付け、再度溜息を吐き出す。
「ついてきちゃうかな……」
「まぁーゼロではないですね」
神近くんの言葉に僕は、どうしたら良いのか逡巡する。病み上がりの神近くんにまた、迷惑をかけるわけにはいかないし、かと言って一人で帰るのは無理だ。とてもじゃないけど、後ろからついてきてるもしれないと考えるだけで、僕の背筋が凍りつく。
「先輩、顔色悪いですよ」
神近くんが僕の顔を覗き込み、微かに笑みを浮かべる。その表情に僕は、酷くやるせない気持ちになってしまう。
「僕には、神近くんがわからないよ……」
僕は素直に疑問を口にする。
「何がですか?」
「神近くんは確かに口は悪いけど、僕の事を助けてくれたし優しい人だって分かる。さっきだって、やり方はどうであれ僕を守ってくれたようなものだし……それなのに、僕が怖がっているのを楽しんでいるようにも見えるから」
僕は神近くんから視線を逸す。沈黙が流れ、冷房の稼働音と蝉の鳴き声が嫌に耳につく。
「……楽しんでますよ。それの何が悪いんですか?」
神近くんの言葉に、僕の心がスッと冷めていく。
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