君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第三章「訪問」

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 覆いかぶさってくる神近くんに、何をする気なのだろうかと僕は二重の不安が押し寄せてしまう。相変わらず部屋にはピンポーンーーピンポーンーーと甲高い音が鳴り響き、普通の訪問者にしてもしつこいぐらいだった。

 神近くんは僕の手首を押さえると、顔を近づけ唇を合わせてくる。ただのキスではなく、舌をねじ込んできて僕の舌を絡め取るような濃厚なものだ。

「んんっ……はぁっ……」

 突然の事に恐怖よりも、僕は驚いてしまう。前回除霊の際にしたキスもそれなりに濃いが、今回はそれを更に上回るような激しさだ。僕は恥ずかしながら、腰の辺りがゾクゾクするような刺激が芽生えてしまう。

――ドンドンドドンドン

 ドアを激しく叩く音に僕は恐怖で体がビクッと、跳ね上がる。危うく叫びそうになったが、皮肉にも神近くんのキスのお蔭でそうならずに済む。

 僕の呼吸すら奪うような口づけが離れた頃には、部屋の中が静まり返っていた。僕は少しだけ涙を零しながら神近くんを見上げる。

 神近くんは少し気まずげに視線を逸し、「そんな目で見ないでください」と呟いた。

「今の……何だったの?」

 僕は少し掠れた声で問いかける。

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