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第二章「正真」
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しおりを挟む「ーーだからさ……彼はそんなに悪い人に見えないんだよね……」
僕の語尾は自然と頼りなさげに小さくなっていく。泰明は僕の話を聞き終えても、眉を寄せていたのだ。
神近くんの名誉挽回にと話したのに、逆効果だったのではないかと不安が押し寄せてしまう。
「お前は……変に思わなかったのか?」
やっと口を開いた泰明は、不機嫌そうに問いかけてくる。
「何が?」
「お姉さんにはキスしてなかったんだろ? それなのに、お前にはしてた事だ」
「もちろん、不思議に思ったよ。神近くんに聞こうとしたけど、それどころじゃなくなっちゃって……」
「別に聞かなくたって、答えは分かるだろうが……」
泰明が呆れたような表情で、僕を見つめる。
「……どういう事?」
訳が分からず、僕は首を傾げる。
「アイツは、お前の事が好きなんだろ」
泰明がなんとも気まずげな表情でそっぽを向く。僕は可笑しくなって、思わず笑ってしまう。
「そんなはずないじゃん! だってあれだけ、僕を馬鹿にしてるんだからさー。普通、好きだったら優しくするよ」
そこでチャイムが鳴り響き、強面の男性教師が入って来た事で話は中断となった。泰明は納得がいかない顔をしていたが、僕からしてみたらあり得ないことだ。
もしかしたら、神近くんは泰明に対する意表返しに僕を使ったのかもしれない。男同士でキスするなんて、突飛な姿を見せればさすがに泰明だって驚くだろう。
ちらりと泰明を横目で見ると、不機嫌さを滲ませ担任教師に視線を向けている。
神近くん。どうやら君の思惑通りだよ。僕は心の中で呟いた。
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