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第二章「正真」
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しおりを挟む「駄目だ」
泰明の躊躇ない一言に、僕は「何で?」と居心地悪く視線を逸らす。なんとなくは予想はしていたが、こんなにもあっさり却下されてしまうと心が折れそうになる。
昼休みの屋上。僕達は売店で買ったパンを持って、給水器の日陰の下にいた。
初夏の撫でるような熱風が頬に触れ、早く教室に戻りたいという気持ちが込み上げてしまう。
本当は教室でも良かったが、神近くんの噂が万が一にでも流れてしまったらいけないと考慮して、夏場は人が立ち入らないこの屋上を選んだのだ。
今日の放課後、僕はパズル同好会の入部届けを出しに行くことになっている。本当だったら泰明に黙っていたいところだが、生徒会の一員である泰明が知るのも時間の問題だ。それだったら、予め言っておいた方が良いと、僕がここに連れてきたのだった。
「あんな奴の言うことは聞く必要がない」
「でも実際に祓ってくれたんだよ。除霊は大変だし危険を伴うのに、僕の為にやってくれたんだからさ。それなりにお礼しないと……」
「本当に祓えてるのかどうかも分からなくてもか?」
僕は驚いて泰明に視線を向けると、泰明は顔を顰め俯いていた。
「神近くんが嘘ついてるって事?」
「そうは言っていない。でも俺もお前も見えないじゃないか……」
「確かにそうだけど……」
泰明の言うことはもっともだ。でも神近くんが嘘を言っているとは、僕にはどうにも思えなかった。
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