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第一章「代償」
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しおりを挟む「泰明が生霊? それはいくらなんでもないよ。生霊ってよっぽど相手に執着心がないと飛ばせないじゃん」
見当違いな神近くんの発言を、僕は少しムッとして言い返す。泰明は確かに過保護な面があるが、それは四歳年下の弟がいて普段から面倒見が良いだけのことだ。
「昨日から思っていましたが、先輩ってやたらとそういう事詳しいですよね。除霊についても調べたみたいですし……」
神近くんの目の色が少し変わり、力無い目元が鋭く光る。除霊の際に言っていた「自ら火の中に飛び込む奴が嫌いだ」という言葉からして、神近くんは幽霊に対してちょっかいを出す人が嫌いなのだろう。それは僕も同意見だ。線引は限りなくグレーに近いけど……
「まぁーオカルトが好きっていうのは否定できないけど……でも神近くんが嫌っているような、自分から取り憑かれに行くような真似はしてない。僕は純粋に不思議な現象に興味があるだけなんだ」
「ふーん。なら良いですけど」
神近くんはそう言って、机に頬杖ついて窓の外を見つめる。
外は相変わらず雨脚が強く、窓に打ち付ける雨粒が線を描くように滑り落ちていた。七月にも関わらず、ひんやりとした空気が半袖から出ている腕の温度を奪い去っていく。
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