9 / 259
第一章「代償」
9
しおりを挟むそうなると必然的に朝の会話が原因だとバレてしまい、失言だったと自分を責める泰明に僕は申し訳無さが込み上げる。それでも食事が喉を通らず、箸が思うように進まない。
夏バテと誤魔化して半分ほど残っている冷やしうどんは、泰明が食べてくれた事で食器を無事に返却する事が出来た。
僕は食事を残すことが嫌で、よっぽどのことがない限り無理してでも食べる。なかなか箸が進まない僕を見かねた泰明が「無理するな」と言って食べてくれなかったら、僕は次の時間もうどんを食べ続けていたかもしれない。
昼食を終えて食堂を出ると、長い廊下を二人で並んで歩いてく。僕の頭の中は家に幽霊がいるかもしれないという事ばかりで、相変わらず上の空な状態だった。
「放課後は予定あるか?」
突然、泰明が強張った口調で沈黙を破った。
「ないけど?」
「だったらお前を見せたい奴がいるんだ」
「僕を?」
泰明は少し硬い表情で頷いた。
「一年で後輩なんだが、実家が神社なんだ。そいつは霊感もあるみたいだし……なんとかなるかもしれない」
まさか身近に霊感のある人間がいるとは思ってもみなくて、僕は驚きのあまり足を止める。
「その人……霊感強いの?」
「強いかどうかはわからない。俺んちの不動産屋に、たまたまそいつが客として来てだな――」
泰明はこの場所ではなんだからと言って僕の腕を引き、近くの空き教室に連れ込まれる。
1
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる