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第二章
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しおりを挟むヒスイに腕を引かれて連れてこられたのは、天野の部屋だった。
ここに来る途中でヒスイの部屋の前で待たされ、出てきたヒスイは手に二本の小瓶を持っていた。
黙ったままで浮かない顔のヒスイに連れ添い、来たのが天野の部屋だった事に驚く。
電気が付いていない部屋は、小窓から差し込む月明かりだけで心許ない。
ぼんやりとした室内に入り、ヒスイは無言のまま布団を敷き始めた。
「えっ、ここで寝るんですか? 窮屈じゃないですか?」
布団が一枚しかないのにどうやって寝るのかと訝しく思っていると、返事がわりに呆れたような溜息が聞こえた。
「あのさー、仮にもお前は男だよな? どんだけ初心《うぶ》なんだか」
ヒスイの言葉にやっと意図を汲み取り、全身の体温が一気に上がってしまう。
「嫌ならやめるし、無理にとは言わない。お前がどうしてもって言うから……この方法しか思いつかなかった」
ヒスイも緊張しているのか、心なしか声が低く掠れている。
布団を敷き終えて腰を下ろしたヒスイが「どうすんの?」と襖の前に立ち尽くす天野に、鋭い視線を投げかけてくる。
唾を飲み込み覚悟を決めると、ゆっくりとヒスイに近づき目の前に腰を下ろす。
ぼんやりと見えるヒスイの表情は険しく、艶っぽさには欠けていたが綺麗だった。銀色の髪と翡翠がかった瞳が薄闇の中でも、ぼんやりと光って見える。
天野が静かに頷くと、ヒスイが持ってきた瓶の一本に口を付けて一気に煽った。口に含んだ状態で、ヒスイの指が天野の顎を捉え顔を近づけてくる。
甘い香りが天野の鼻先を掠め、ヒスイと唇が重なると顎を持ち上げられ唇が僅かに開かれていく。唇の隙間から砂糖水よりも甘い液体が注がれ、微かに体が強張った。
「……うっ、んっ」
ヒスイに与えられた甘味な液体を、ゆっくり飲み干していく。
冷たい舌が割り込み、口腔の昂ぶった熱と混じり合う。舌を絡ませると、甘い氷を舐めているようだった。
ヒスイの首に腕を回すと、天野自ら夢中で舌を絡め取っていく。ちゃんとヒスイも答えてくれるように甘く吸い付いてきて、その度に腰が痺れてしまう。
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