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しおりを挟む緊迫した日々が何日も続き、ついに本番を迎える。
受験票と筆記用具。それから、一日目の教科の重要なポイントの乗ったテキストを持って僕は会場に向かった。
電車に乗ると、すぐさま掌サイズのテキストで少しでも暗記していく。僕と同じように受験生らしい人達のほとんどが、テキストに目を落としていた。
皆一様に表情が強ばっている。かく言う僕も、きっと他人の目から見たらそんな風に映っているだろう。
会場に着くと大勢の人達が建物内に吸い込まれていく。
僕もずっと落ち着かない心臓を持て余しながら、中へと足を踏み入れた。
試験は二日間にわたって行われた。
食欲も減退する中で、母は験担ぎだとばかりに唐揚げやとんかつを用意してくれる。
成功している一を一番に可愛がっていると思っていただけに、僕は改めてそうではなく、ずっと平等に愛情を与えてくれていたのだと知ったのだ。
試験が終わり、一つ肩の荷が下りる。結果が見られるのは、どちらにしても四月の初旬になる。
後は大学入試に向けて、面接、小論文、テスト勉強に励まなければならない。
ハードな毎日に、僕は精神的に辛い日々を送っていた。
だけど、前の僕とは違う。今はなーこや眼鏡くんに良い報告がしたい。彼らにとっての恩返しになるのなら、諦めるわけにはいかないという強い思いがあった。
三学期が始まっても、僕たち受験生は登校しなくても良くなっていた。一応、進路相談や大学入試に向けた相談で来ることは出来るけれど、登校する日は格段に減っていた。
学校に来た時には、屋上へも向かった。だけどそこに、二人は姿を現さなかった。多分僕の為に二人が遠慮したのだろう。
ちょっとでも二人に会いたかった僕は、ショックだった。一分でも良い、一目でもいい。ほんの少しだけ、話をしたかっただけなのに。
それすらも許されないのかと、辛い気持ちばかりが先走っていた。
「二人も辛いと思うよ。兄ちゃんと話したいって思ってるけど、会ったらきっと気持ちが揺らいじゃうって思ってるのかも」
一がそんな風に励ましてくれたことで、僕も立ち直ることが出来たのだった。
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