青空サークル

箕田 はる

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 十二月に入ると、寒さはより一層強まった。
 ホッカイロにマフラー、コートと完全防寒をしようとしても、やっぱりはみ出した肌の部分は凍ったように冷たくなってしまう。
 屋上は特に野外でもあり、しかも高所のせいで風も強い。寒さに身を縮こまらせながら、僕は活動を続けていた。
「大事な時期に風邪なんて引いたら大変じゃん。青空サークルは活動を中止します」
 なーこの突然の宣言に、僕は絶句する。
「体が資本だからな。それに来月に備えて集中した方が良いだろ」
 眼鏡くんまでも、なーこと同意見のようだった。
「僕は大丈夫だから」
 今ですら日数が減っているのに、活動休止となれば、もっと顔を合わせる日が減ってしまう。
「ぶちょー命令だから」
「だけど、後数ヶ月で卒業になっちゃうし」
 僕が食い下がるも、なーこは「だめだめ」と首を横に振る。
「俺たちだって、ホッシーに会えないのは辛い。だけどな、それ以上にホッシーの将来が狭まることの方が俺たちは辛い」
 眼鏡くんに諭され、僕は口を閉ざす。
「そうそう。あたし達のせいでホッシーの全力が出せない方が、こーかいすると思うし」
 二人にそう言われてしまえば、僕はそれ以上言えない。
「こないだの答えは、僕が合格すること?」
 あの時の答えを僕はまだ聞いていない。だけど、そんな予感が頭の片隅にあった。
 二人が顔を見合わせる。それから僕の方を見て、「それも含まれるかも」となーこが答える。
「良い報告を待ってる」
 眼鏡くんが僕の肩を叩く。触れられないけれど、確かに思いは込められていた。
 大学入学共通テストは一月に行われる。十二月はクリスマスや正月とイベントは多いけれど、今年は家族でも簡略して、僕は勉強に打ち込んでいた。
 夜遅くまで机にかじりつく僕に、母が珍しく部屋のドアを叩く。中に入ってきた母の手にはお盆があった。
「あんまり根詰めないようにね」
 いつもと変わらない神経質そうな顔だったけれど、言葉尻は優しかった。
「ありがとう」
 僕は母からお盆を受け取る。お茶碗には湯気の上がったお茶漬け。それから、たくわんの乗った小皿も添えられていた。
「阿達さんの所から電話があって、二人でお邪魔したんでしょ?」
 僕は身構える。いつかはバレると思っていたけれど、あれから何も言われなかったら安心していた矢先だった。
「凄く喜んでたの……理由はよく分からないけど……ありがとね」
 柔らかく微笑む母に、僕は黙ったまま頷く。
「じゃあ、頑張って」と言って、部屋を出て行く母を見送り、僕は母が作ってくれたお茶漬けに箸をつけた。
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