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しおりを挟む週末には予定通り、なーこの家にむかう為に家を出た。
一は夕方からのレッスンがある。それまでには戻らなきゃいけないことから、僕たちにはタイムリミットがあった。
「てか、せっかくだったら、なーこさんの好きなものを買っていけば良いんじゃない? そうすれば、向こうの人も信じてくれるかもしれないし」
一が昨日の夜に提案してきたことで、僕たちはまず原宿に行くことにした。
なーこが好きな場所が原宿だから、そこなら何か好きそうなものが手に入るはずだった。
休日の原宿は人が多く、僕は降り立った時点で足が竦んでいた。一方で一は、何度か来たことがあるらしく、立ち尽くす僕を促して前へ前へと足を進めて行く。
「なーこさんが生きてたらきっと、こんなのが好きなんじゃないかな」
そう言っては、カラフルでポップなキーホルダーや食べきれない程の大きさのペロペロキャンディを指さしていた。
僕はこういう所に来たことがなければ、女子がどんなものを好むのか知らない。連れてきて良かったと、隣ではしゃぐ一を見て思う。
原宿で買い物をして、それから電車に乗ること二十分。なーこの家の最寄り駅に着く。
二人でなーこの家を目指しながら僕は、一に教育学部に入ろうか迷っているのだと口にした。
「え、良いと思うよ。兄ちゃん教えるのすっげー上手いし」
「でも……もう学校推薦の希望を出してるから、今更変えられないし……」
僕が学校推薦で希望した大学は文学部であって、教育学部ではなかった。もし、教育学部を選ぶのであれば、推薦を辞退しなくちゃいけなかった。
「母さんや父さんには言ったの?」
「……まだ」
「そっか……でも、迷ってるってことは、少なからずやりたいって思ってるってことでしょ。だったら、チャレンジするのも良いと思うよ」
「……うん」
両親や教師に言ったら、きっと反対されるかもしれないという不安があった。それに僕の心がまだ、定まっていないというのもある。
「相談してみるだけ、してみた方は良いよ。ずっとモヤモヤし続けるよりも、ずっと良いと思うから」
一に説得されているうちに、なーこの家の前に辿り着く。家の前に立つと、僕は「ここだよ」と告げる。
途端に緊張感が込み上げ、僕は頭の中が真っ白になりそうになった。
「僕の学校の先輩に……なーこの事を知っている人がいて……会いに行って欲しいって頼まれた……それでいい?」
僕が段取りを確認すると、一も緊張した面持ちで頷く。
「……じゃあ、押すよ」
僕は大きく深呼吸をすると、インターホンを押す。ピーンポーンと中から微かに音がした。
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