異国で咲く恋の花

第49話 動き出す心、交差する感情

　朝日が診療所の窓から柔らかく差し込み、エリスは静かに目を覚ました。窓の外では、村の平穏な朝が広がり、鳥のさえずりが聞こえていたが、彼女の心は静かではなかった。カインとアレク、二人の存在が彼女の心を引き裂くように揺れ続けている。

（私は……どうしてこんなに心が迷っているの？ カインさんが戻ってくると信じていたのに、アレクにこんなにも心が動かされている）

　エリスはベッドに横たわったまま、心の中で問い続けた。カインへの愛情が深く残っていることは確かだったが、アレクが彼女にとってどれだけ大切な存在になりつつあるかも、もう無視できなくなっていた。

　午前中、エリスは診療所でいつものように患者を迎え入れていた。村の人々は盗賊団の影が消え、日常生活を少しずつ取り戻していたが、エリスの心の中は未だに混乱が続いていた。診療所に訪れる村人たちはエリスに感謝の言葉を述べていたが、彼女自身は心の奥底で別のことで揺れ動いていた。

「エリスさん、いつもありがとうございます。本当に助かっています」

　村人たちの感謝の言葉を聞きながらも、エリスは心の中で何度もカインとアレクについて考えていた。

（私は本当にカインさんを待ち続けているの？それとも、アレクに対するこの気持ちを信じるべきなの？）

　エリスは心の中で繰り返されるこの問いに答えを見つけようと努めたが、ますます混乱が深まるばかりだった。

　午後、エリスは診療所の物資を補充するために市場へ出かけることにした。村の活気が戻りつつある中で、彼女の心はアレクに会いたいという思いで揺れていた。彼に会うことで、少しでも自分の気持ちを整理できるかもしれないと期待していた。

（彼に会えば、きっと私は少し落ち着けるはず……）

　市場は村人たちの賑わいで活気づいていたが、エリスの心はまだ不安定なままだった。歩き回りながら、無意識にアレクの姿を探してしまっている自分に気づき、彼女はため息をついた。

（私は本当にどうしてしまったの？）

　そんな自問自答が続く中、ふと市場の向こうでアレクの姿を見つけた。彼は村人たちと親しげに話しており、その落ち着いた態度がエリスの心に安らぎをもたらした。

（アレク……あなたに会うだけで、私はこんなにも安心してしまうなんて）

　エリスは胸に広がる温かい感情を抑えきれず、アレクの方へと足を向けた。

「アレク、こんにちは。今日も村の警備について話していたんですね」

　エリスの声に、アレクは柔らかく微笑んで振り向いた。

「エリスさん、こんにちは。ええ、村の安全を守るためにはまだ気を抜けません。でも、状況はだいぶ落ち着いてきていますよ」

　その言葉に、エリスはほっと息をついた。アレクの冷静な声が、いつも彼女に安心感をもたらしてくれる。

「あなたがいてくれるおかげで、村の人たちも安心していると思います。もちろん、私も……」

　エリスは言葉に詰まりながらも、感謝の気持ちを込めてそう伝えた。だが、心の中では彼に対する感情が日ごとに強くなっていることを感じていた。

　その夜、エリスは診療所のベッドに横たわり、また静かに窓の外を見つめていた。星が夜空に瞬き、村は静けさに包まれていたが、彼女の心の中は依然として揺れ動いていた。

（カインさんが戻ってきたら、私はどうすればいいの……？ アレクへのこの気持ちはどうなるの？）

　エリスは心の中でカインに問いかけながらも、その答えが見つからないままだった。カインとの思い出が深く根付いている一方で、アレクという新たな存在が彼女にとってどれだけ大切になりつつあるかを無視することはできなかった。

　翌朝、エリスは診療所でいつものように患者を迎え入れたが、その日は特に心が不安定だった。カインが戻ってくるかどうかも分からない状況で、アレクへの感情がますます彼女を惑わせていた。

（私は……誰を選ぶべきなの？）

　エリスは診療に集中しようと努めたが、アレクのことが頭から離れなかった。彼の存在が、彼女にとってどれだけ重要なものになっているのかを感じながらも、カインとの未来を否定することはできなかった。

　午後、エリスは再び市場へ出かけた。市場は人々で賑わっており、村の生活が少しずつ元の姿を取り戻しているように見えたが、エリスの心の中は落ち着かないままだった。歩いていると、自然とアレクを探してしまう自分に気づき、またため息をついた。

　すると、再びアレクの姿が市場の一角に見えた。彼は村人たちと話をしており、その姿を見るとエリスの心はまた揺れた。

（アレク……あなたがいるだけで、私はどうしてこんなにも安心できるんだろう）

　エリスは自分の中で芽生えている感情が本物であることを感じつつも、その感情に戸惑っていた。カインへの思いがまだ消えていないことを知っているからこそ、どうすればいいのか分からなくなっていた。

　その夜、エリスは診療所で静かに一人で過ごしていた。村は静まり返り、夜空には星々が輝いていたが、彼女の心の中は再び揺れ動いていた。

（カインさん……私はどうすればいいの？ あなたを待ち続けるべきなの？ それとも……）

　エリスは心の中でカインに語りかけながら、アレクに対する新たな感情が日に日に強まっていることに気づいていた。彼女にとって、どちらの男性も大切な存在であり、どちらかを選ぶという決断が今もなお迫っていた。

　翌朝、エリスは診療所でいつものように仕事をしていたが、心の中は依然としてカインとアレクの間で揺れ続けていた。彼女にとって、この状況から抜け出すためには何かを決断しなければならないことが分かっていた。

（私は、どうするべきなの……？）

　エリスは自分自身に問いかけ続けたが、その答えはまだ遠く、届かない場所にあるように感じていた。