56 / 80
第56話:心の中で育つ愛情、試練の予兆
しおりを挟む
夜が更けて、静寂が村を包み込む。リリアナは窓から月明かりに照らされる村の景色を眺めていた。セスと過ごした時間が頭から離れず、彼女の心は穏やかでありながらも、次第に強まる感情に戸惑いを覚えていた。
(彼といると安心できる……けれど、それだけではない気がする)
リリアナは、自分がセスに対して抱いている感情が、ただの安心感以上のものであることを感じ始めていた。彼の隣にいると、心が安らぎ、体の緊張が自然と解ける。しかし、それだけではない――もっと強く、もっと深い感情が彼女の中で芽生えつつあった。
(これが……愛なのだろうか)
その考えが頭に浮かぶたびに、リリアナの胸は大きく高鳴った。これまで誰かに対して感じたことのない感情――それが今、彼女の中でゆっくりと形を成していた。彼に対する愛情が、少しずつだが確実に育っているのを彼女は感じ始めていた。
翌朝、リリアナは早くから村を見回るために家を出た。村人たちはいつも通りの生活を送っており、リリアナが守るべきこの村は、今日も穏やかな日常を迎えているようだった。だが、彼女の心には少しだけ不安の影が差していた。
(私がこの村を守るために全力を尽くしている……けれど、今、私の心には別の想いがある)
リリアナは自分がセスに対して抱く感情が、村を守る使命に影響を与えてしまうのではないかと懸念していた。使命を果たすことは自分にとって何よりも重要であるはずなのに、セスと過ごす時間が増えるたびに、彼女の心はそちらへ引き寄せられていた。
そんなリリアナの考えが途切れたのは、村の広場でエマと出会った時だった。エマはいつものように温かい笑顔を浮かべてリリアナに手を振り、すぐに彼女の元へ駆け寄ってきた。
「リリアナ様、昨日の夕方、セス様とご一緒にいらっしゃいましたね。お二人、すごく仲が良さそうでした」
その言葉に、リリアナの顔が一瞬で赤くなった。エマはいつも周囲をよく見ており、特にリリアナの変化に敏感だった。
「ええ……そうね。彼とは、最近いろいろと話すようになったの」
リリアナは照れ隠しに軽く笑って答えたが、エマの視線は真剣だった。
「リリアナ様、あなたがセス様に対して抱いている気持ち、少しはっきりしてきたのではありませんか?」
その言葉に、リリアナの胸はドキリと跳ねた。エマの鋭い観察力が、自分の心の中に潜んでいる感情を見透かしているように感じられた。リリアナは少しの間黙っていたが、やがて静かに答えた。
「……たぶん、そうね。私は彼に対して特別な感情を抱いていると思う。でも、それが何なのか、まだ自分でもよく分からないの」
エマは優しく頷き、リリアナの肩に手を置いた。
「それでいいんです。大切なのは、リリアナ様がその感情に正直になること。恋愛というのは、時間をかけて育むものですから、急ぐ必要はありません」
エマのその言葉に、リリアナは少しだけ心が軽くなった。彼女が抱いている感情が恋愛であるならば、それは自然に育っていくものだ――そう信じることで、少しずつ不安が和らいでいった。
午後になると、リリアナはまたセスに会うために村の外れへと向かうことにした。彼と話すことで、自分の気持ちを整理しようと思ったのだ。村の守護者としての責任を果たしながらも、彼との時間が自分にとって重要であることを認め始めていた。
セスはすでに村の端にある小高い丘で待っていた。彼の姿を見ると、リリアナの胸はまた高鳴った。セスはリリアナに気づくと、柔らかい微笑みを浮かべて手を振った。
「リリアナ様、今日も来てくださったのですね」
その言葉に、リリアナは少し恥ずかしそうに笑いながら、彼の隣に腰を下ろした。
「ええ、あなたと話す時間が、今は私にとって大切なものになっているから……」
その言葉に、セスは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに優しく頷いた。
「私も同じです、リリアナ様。あなたと話すことで、自分の中にあった迷いや不安が少しずつ消えていくような気がしています」
二人はしばらくの間、穏やかな時間を共有していた。風が優しく吹き、夕陽が村全体を照らしていた。リリアナはセスと共にいることで、自分の中にある不安が徐々に薄れていくのを感じていた。彼の隣にいるだけで、自分がもっと強くなれるような気がしていた。
(私は……彼を信じられる)
その思いが、リリアナの心に静かに広がっていった。彼との時間が自分にとってかけがえのないものになりつつあることを、彼女はようやく認め始めていた。
その時、セスがふと口を開いた。
「リリアナ様……これから、もしもあなたが何か大きな困難に直面した時、私は必ずあなたの力になります」
その言葉に、リリアナの胸が大きく揺れた。彼が自分のことを思ってくれている――それを改めて感じた瞬間だった。
「セス……あなたがそう言ってくれることが、私にとって何よりの励みになるわ」
リリアナはそう言って、静かに彼の瞳を見つめた。その瞳の中には、確かな決意と優しさが宿っていた。彼が自分を支えようとしていることが、彼女にとって大きな意味を持っていた。
その後、二人はまたしばらくの間、静かに並んで座っていた。言葉は少なかったが、その沈黙の中にはお互いへの信頼と絆が確かに育まれていた。
リリアナは、セスが自分にとって特別な存在であることを、今や完全に認めていた。そして、彼との関係がこれからどうなっていくのか――それを考えるたびに、彼女の胸は高鳴り、同時に少しの不安が入り混じっていた。
その夜、リリアナは静かに星空を見上げていた。村の静けさが彼女の心を包み込む中で、彼女は自分の未来について思いを巡らせていた。セスと共に過ごす時間がこれからも続くことを願いながらも、彼女の心には新たな試練が近づいている予感があった。
(私は、彼と一緒に村を守り抜く……それが私の使命)
リリアナは心の中で強く誓った。彼との絆が深まる一方で、村を守るという使命を忘れるわけにはいかない。彼女の中で、愛と使命が交錯し、これから訪れるであろう試練に立ち向かうための決意が固まっていった。
(彼といると安心できる……けれど、それだけではない気がする)
リリアナは、自分がセスに対して抱いている感情が、ただの安心感以上のものであることを感じ始めていた。彼の隣にいると、心が安らぎ、体の緊張が自然と解ける。しかし、それだけではない――もっと強く、もっと深い感情が彼女の中で芽生えつつあった。
(これが……愛なのだろうか)
その考えが頭に浮かぶたびに、リリアナの胸は大きく高鳴った。これまで誰かに対して感じたことのない感情――それが今、彼女の中でゆっくりと形を成していた。彼に対する愛情が、少しずつだが確実に育っているのを彼女は感じ始めていた。
翌朝、リリアナは早くから村を見回るために家を出た。村人たちはいつも通りの生活を送っており、リリアナが守るべきこの村は、今日も穏やかな日常を迎えているようだった。だが、彼女の心には少しだけ不安の影が差していた。
(私がこの村を守るために全力を尽くしている……けれど、今、私の心には別の想いがある)
リリアナは自分がセスに対して抱く感情が、村を守る使命に影響を与えてしまうのではないかと懸念していた。使命を果たすことは自分にとって何よりも重要であるはずなのに、セスと過ごす時間が増えるたびに、彼女の心はそちらへ引き寄せられていた。
そんなリリアナの考えが途切れたのは、村の広場でエマと出会った時だった。エマはいつものように温かい笑顔を浮かべてリリアナに手を振り、すぐに彼女の元へ駆け寄ってきた。
「リリアナ様、昨日の夕方、セス様とご一緒にいらっしゃいましたね。お二人、すごく仲が良さそうでした」
その言葉に、リリアナの顔が一瞬で赤くなった。エマはいつも周囲をよく見ており、特にリリアナの変化に敏感だった。
「ええ……そうね。彼とは、最近いろいろと話すようになったの」
リリアナは照れ隠しに軽く笑って答えたが、エマの視線は真剣だった。
「リリアナ様、あなたがセス様に対して抱いている気持ち、少しはっきりしてきたのではありませんか?」
その言葉に、リリアナの胸はドキリと跳ねた。エマの鋭い観察力が、自分の心の中に潜んでいる感情を見透かしているように感じられた。リリアナは少しの間黙っていたが、やがて静かに答えた。
「……たぶん、そうね。私は彼に対して特別な感情を抱いていると思う。でも、それが何なのか、まだ自分でもよく分からないの」
エマは優しく頷き、リリアナの肩に手を置いた。
「それでいいんです。大切なのは、リリアナ様がその感情に正直になること。恋愛というのは、時間をかけて育むものですから、急ぐ必要はありません」
エマのその言葉に、リリアナは少しだけ心が軽くなった。彼女が抱いている感情が恋愛であるならば、それは自然に育っていくものだ――そう信じることで、少しずつ不安が和らいでいった。
午後になると、リリアナはまたセスに会うために村の外れへと向かうことにした。彼と話すことで、自分の気持ちを整理しようと思ったのだ。村の守護者としての責任を果たしながらも、彼との時間が自分にとって重要であることを認め始めていた。
セスはすでに村の端にある小高い丘で待っていた。彼の姿を見ると、リリアナの胸はまた高鳴った。セスはリリアナに気づくと、柔らかい微笑みを浮かべて手を振った。
「リリアナ様、今日も来てくださったのですね」
その言葉に、リリアナは少し恥ずかしそうに笑いながら、彼の隣に腰を下ろした。
「ええ、あなたと話す時間が、今は私にとって大切なものになっているから……」
その言葉に、セスは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに優しく頷いた。
「私も同じです、リリアナ様。あなたと話すことで、自分の中にあった迷いや不安が少しずつ消えていくような気がしています」
二人はしばらくの間、穏やかな時間を共有していた。風が優しく吹き、夕陽が村全体を照らしていた。リリアナはセスと共にいることで、自分の中にある不安が徐々に薄れていくのを感じていた。彼の隣にいるだけで、自分がもっと強くなれるような気がしていた。
(私は……彼を信じられる)
その思いが、リリアナの心に静かに広がっていった。彼との時間が自分にとってかけがえのないものになりつつあることを、彼女はようやく認め始めていた。
その時、セスがふと口を開いた。
「リリアナ様……これから、もしもあなたが何か大きな困難に直面した時、私は必ずあなたの力になります」
その言葉に、リリアナの胸が大きく揺れた。彼が自分のことを思ってくれている――それを改めて感じた瞬間だった。
「セス……あなたがそう言ってくれることが、私にとって何よりの励みになるわ」
リリアナはそう言って、静かに彼の瞳を見つめた。その瞳の中には、確かな決意と優しさが宿っていた。彼が自分を支えようとしていることが、彼女にとって大きな意味を持っていた。
その後、二人はまたしばらくの間、静かに並んで座っていた。言葉は少なかったが、その沈黙の中にはお互いへの信頼と絆が確かに育まれていた。
リリアナは、セスが自分にとって特別な存在であることを、今や完全に認めていた。そして、彼との関係がこれからどうなっていくのか――それを考えるたびに、彼女の胸は高鳴り、同時に少しの不安が入り混じっていた。
その夜、リリアナは静かに星空を見上げていた。村の静けさが彼女の心を包み込む中で、彼女は自分の未来について思いを巡らせていた。セスと共に過ごす時間がこれからも続くことを願いながらも、彼女の心には新たな試練が近づいている予感があった。
(私は、彼と一緒に村を守り抜く……それが私の使命)
リリアナは心の中で強く誓った。彼との絆が深まる一方で、村を守るという使命を忘れるわけにはいかない。彼女の中で、愛と使命が交錯し、これから訪れるであろう試練に立ち向かうための決意が固まっていった。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる