【完結済み】追放された貴族は、村で運命の愛を見つける

ゆうな

文字の大きさ
上 下
55 / 80

第55話:揺れる想い、試される絆

しおりを挟む
騙された?
「シャル、早く逃げろ…こいつと戦うのは無謀だ。」
倒れたオルクスが言う。
「逃げるのも無謀ですよ。」
銃口をこちらに向けるプロフェート。
ヨシュカである俺の力ならば、倒せる気がする。しかし、あのオルクスがこうして倒れている事はオルクスの言葉を裏付けていた。その上銃があっては下手に動けない。つまり、プロフェートから逃げる事も不可能だ。
オルクスの血は止まらない。いつの間にかhpが表示されている。この空間は謎だが、プロフェートが作ったというのなら仕様も自由自在なのだろう。オルクスは死ぬのか?今はあまりその事が気にならなかった。俺を助けてくれたけど、その命が今危ないのだから仕方ない。
自分の力を信じて戦うか?
オルクスの言葉を信じて逃げるか?
俺にはその選択が出来そうにない。
俺に関わった人は皆死んでいく。それならもういっそ、ここで終わらせようか?でも、俺にはそんな勇気も無い。
「お二人とも、さようなら。」
プロフェートが引き金に指を掛けた。

【剣士・メッサー『正義の剣』】

「…死ね。」
プロフェートの少年が、首から鮮血を撒き散らしながら倒れた。上から落ちてきたのは、ユスティーツだった。
「ユスティー…ツ…どうしてここに。」
「あ!シャルさん!…と、オルクス。」
彼は血がこびりついた顔で無邪気に笑った。笑顔のまま剣を少年に突き刺す。何度も何度も、狂ったように突き刺した。汚い音と共に血が広がっていく。
「大丈夫ぅ?二人とも。こんな所で何してたのぉ?」
「フェイ…!」
すると、オルクスが身を起こした。
「本体がいない…逃げたぞ。」
言われてみれば、ユスティーツが来た時から見当たらない。話しているのは少年の方だったから、つい忘れてしまっていた。
「紅糸を付けるよう、イデー嬢には頼んでおいたけど。」
「駄目だ。糸を切られた…絶対に防げない、あの紅糸を。」
ヴイッツに、イデー。これでヨシュカは全員揃ってしまった。
「シュピッツが教えてくれたんだ!シャルさん達がどこかに行く所を見たって!」
シュピッツが?あった覚えはない。どこかで見られていたのだろうか。それとも、ミスィオーンが見てシュピッツに報告したのだろうか。
「二人だけで正義のヒーローになるのは狡いよ!オレもヴェルトを救う!」
「状況は最悪だよ、オル君。シュティレ嬢が亡くなって…君も重症だ。ここから出る方法すら分からない。」
ヴイッツはオルクスに近付くと、綺麗な紫色の瓶を差し出した。
「シュティレ嬢の遺体から回収した。…回復薬だ、瀕死でも助かる程の強力な物。」
オルクスはそれを奪い取る様に受け取ると、一気に飲み干した。すぐに効果が出たのか立ち上がる。
「僕の推測では、あのヒビを壊せばどうにかなる気がする。違う?」
俺は慌てて答える。
「そ…そうです、何故かオルクスがあれを攻撃して…」
「オル君。」
見事にスルーされると、ヴィッツはオルクスを見詰めた。
「ヒビを壊すのは説明を聞いた後だ。…君は何を知っている?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

処理中です...