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父の初恋
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父の葬儀も順調に終わり、最後に葬儀場のホールの出口に立ち、参列者に挨拶をしていく。
50歳でなくなったもんだから、すごく沢山の人がかけつけてくれた。
知ってる人知らない人、まだ列が続く。
その列に、見たことのある人がいた。
「…あれ…?えっ?あれって!」
驚いて、弟のスーツの端を引っ張る。
「なに?」
「ちょっと、静かに見て!あの5人目の後ろの人!あの人じゃない!?」
「…ヤバっ……」
そこにいたのは、お父さんが高校時代に付き合っていた時の彼女だった。
なぜ知っているのかというと、その頃の2ショット写真をお通夜の夜に、弟とこっそり出して見ていたからだった。
そして、30年以上たつのに、あの写真と変わらずキレイだったからだ。
ハッと我に返りお母さんをチラッと横目でみる。
(どうやら気付いてないみたいだ)
安心していると、ついにその元カノの順番が来た。
「…このたびは…本当に……」
涙で、言葉が喉に詰まって続かない父の元カノを、私は、ただただ見つめるしかできなかった。
その空気を変えたのが母だった。
「よく来てくれましたね。喜んでいると思います!ありがとう」
頭を何度も下げ、元カノは友人に抱えられるように玄関を出ていった。
「え?お母さん知ってたの?」
「知っとるよ!私が呼んだんだもん!あとお父さん生きてる時に、最後に会いたい人おらんの?ってきいて、元カノっていうから、連絡先聞いて、病院までお見舞い来てくれとったんよ!」
笑顔で豪快に語る母に、あっけにとられながらも、心底、父と母の関係が羨ましく思えた。
(なかなかやるやん!)
弟をみたらニヤニヤ笑っていたから、きっと私と同じ気持ちだったんだと思う。
父と元カノとの話は、聞いたことがあった。
これまた、大恋愛だったそうだ。
ギターで、歌を作って送ったり、写真を見る限り、キャンプにいったり遊園地に行ったりと甘酸っぱい青春を過ごし、最終的に彼女は両思いのまま、父親に強制的にお見合いさせられて結婚していったそうだ。
父の大恋愛、そして叶わなかった初恋。
あの映画のワンシーンのような登場に、家に帰ってからも胸がドキドキしていた。
元カノが来てくれるお葬式かぁ、と昔話をおもいだした。
50歳でなくなったもんだから、すごく沢山の人がかけつけてくれた。
知ってる人知らない人、まだ列が続く。
その列に、見たことのある人がいた。
「…あれ…?えっ?あれって!」
驚いて、弟のスーツの端を引っ張る。
「なに?」
「ちょっと、静かに見て!あの5人目の後ろの人!あの人じゃない!?」
「…ヤバっ……」
そこにいたのは、お父さんが高校時代に付き合っていた時の彼女だった。
なぜ知っているのかというと、その頃の2ショット写真をお通夜の夜に、弟とこっそり出して見ていたからだった。
そして、30年以上たつのに、あの写真と変わらずキレイだったからだ。
ハッと我に返りお母さんをチラッと横目でみる。
(どうやら気付いてないみたいだ)
安心していると、ついにその元カノの順番が来た。
「…このたびは…本当に……」
涙で、言葉が喉に詰まって続かない父の元カノを、私は、ただただ見つめるしかできなかった。
その空気を変えたのが母だった。
「よく来てくれましたね。喜んでいると思います!ありがとう」
頭を何度も下げ、元カノは友人に抱えられるように玄関を出ていった。
「え?お母さん知ってたの?」
「知っとるよ!私が呼んだんだもん!あとお父さん生きてる時に、最後に会いたい人おらんの?ってきいて、元カノっていうから、連絡先聞いて、病院までお見舞い来てくれとったんよ!」
笑顔で豪快に語る母に、あっけにとられながらも、心底、父と母の関係が羨ましく思えた。
(なかなかやるやん!)
弟をみたらニヤニヤ笑っていたから、きっと私と同じ気持ちだったんだと思う。
父と元カノとの話は、聞いたことがあった。
これまた、大恋愛だったそうだ。
ギターで、歌を作って送ったり、写真を見る限り、キャンプにいったり遊園地に行ったりと甘酸っぱい青春を過ごし、最終的に彼女は両思いのまま、父親に強制的にお見合いさせられて結婚していったそうだ。
父の大恋愛、そして叶わなかった初恋。
あの映画のワンシーンのような登場に、家に帰ってからも胸がドキドキしていた。
元カノが来てくれるお葬式かぁ、と昔話をおもいだした。
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