11 / 33
サマワ王国沖海戦
しおりを挟む
サマワ王国より北 15km
海を割り進む40隻の帆船。その中の1つ、サマワ王国駐留軍旗艦ルナの甲板。
「間もなく白竜が反応を絶った海域です。」
「分かった。司令も用心深いお方だ。今回、反応を絶った竜騎士は新人だったんだろ?この曇天の中で墜落しただけだろうに。」船長がため息混じりに言う。司令は基地に残っているため、臨時で彼が指揮を執っている。
「まったくです。それもこんな忙しい時に、面倒事をおこすとは懲戒ものですね。」士官の1人が言う。
「生きていればだがな。」苦笑が響く。特に話すこともなくなり、静寂が訪れ雨の音に包まれる。そんな一時の静けさは、あっという間に破られた。
「船長、前方より何かが飛んできます!」見張りが声を荒げる。船長が目を凝らすと、そこには小さい回る羽が幾つも付いた異形の魔導生物がいた。
「何なんだあれは。」船長は誰ともなく問いかける。
「分かりません。しかし、白竜の反応消失に関連があるかと。」
「あんな小さな魔導生物に、帝国の誇る白竜が撃墜されたとでも言うのか!」船長は怒鳴る。
「消失地点に異形の魔法生物。状況を考えますとそうなります。」士官が粘り強く続ける。
小さな魔導生物が近づき、話しかけてくる。
「こちら、日本国海上自衛隊。貴方達は日本の領海を侵犯している。直ちに転進せよ。直ちに転進せよ。」
「日本?確か召喚地の国だったはず。まさか、魔導生物を飼い慣らしているのか!魔法が使えないはずなのに。」士官が驚愕する。
「あれは敵だ!それだけで良い。戦闘用意、ファイヤーボールを使える魔導師は甲板に上がれ!竜母は白竜を発艦させろ。」船内の魔導師が甲板に吐き出され続ける。しかし、階段が少ないためなかなか時間が掛かる。それでも数刻後には、全ての船で魔導師が整列する。辺境とはいえ、アンゴラス帝国軍の練度は決して低くない。
「ファイヤーボール発射!」号令がかかり、船から幾つもの赤い光が放たれる。海より空へ吸い込まれるそれは、幻想的ですらあった。そして…。
「ファイヤーボール命中!敵機墜落します。」ファイヤーボールの1つが当たり、たくさんの羽が付いた竜は、バラバラになり海へ墜ちた。乗組員達の歓声が響き渡る。
「やりましたね、司令。司令?どうかなされましたか?」士官は敵機を撃墜したと言うのに、何やら考え込んでいる司令を心配する。
「あれが、白竜に勝てる筈がない。植民地制圧軍は、異形の巨竜に負けたと言う。もし、あれが巨竜の子供だとしたら…」
「北より何十もの光が接近してきます!」
船長は、我が目を疑った。まず、発艦した白竜全てに光が刺さり爆散した。その次は船団に、その光が舞い降り帝国の誇る戦列艦を、木屑へと変えてゆく。
「戦列艦アラドス、マルシス轟沈。竜母アマナミス沈没。報告が追い付きません。」
精強なアンゴラス帝国艦隊が、成す術もなく消えていく。何をどうすれば被害を抑えられるか、全く思いつかない。私は無能の将として歴史に名を刻むだろう。
「本艦に光の矢が接近、回避っ!回避を。」他の何十の船と同じ運命を、旗艦ルナも辿ったのであった。
海を割り進む40隻の帆船。その中の1つ、サマワ王国駐留軍旗艦ルナの甲板。
「間もなく白竜が反応を絶った海域です。」
「分かった。司令も用心深いお方だ。今回、反応を絶った竜騎士は新人だったんだろ?この曇天の中で墜落しただけだろうに。」船長がため息混じりに言う。司令は基地に残っているため、臨時で彼が指揮を執っている。
「まったくです。それもこんな忙しい時に、面倒事をおこすとは懲戒ものですね。」士官の1人が言う。
「生きていればだがな。」苦笑が響く。特に話すこともなくなり、静寂が訪れ雨の音に包まれる。そんな一時の静けさは、あっという間に破られた。
「船長、前方より何かが飛んできます!」見張りが声を荒げる。船長が目を凝らすと、そこには小さい回る羽が幾つも付いた異形の魔導生物がいた。
「何なんだあれは。」船長は誰ともなく問いかける。
「分かりません。しかし、白竜の反応消失に関連があるかと。」
「あんな小さな魔導生物に、帝国の誇る白竜が撃墜されたとでも言うのか!」船長は怒鳴る。
「消失地点に異形の魔法生物。状況を考えますとそうなります。」士官が粘り強く続ける。
小さな魔導生物が近づき、話しかけてくる。
「こちら、日本国海上自衛隊。貴方達は日本の領海を侵犯している。直ちに転進せよ。直ちに転進せよ。」
「日本?確か召喚地の国だったはず。まさか、魔導生物を飼い慣らしているのか!魔法が使えないはずなのに。」士官が驚愕する。
「あれは敵だ!それだけで良い。戦闘用意、ファイヤーボールを使える魔導師は甲板に上がれ!竜母は白竜を発艦させろ。」船内の魔導師が甲板に吐き出され続ける。しかし、階段が少ないためなかなか時間が掛かる。それでも数刻後には、全ての船で魔導師が整列する。辺境とはいえ、アンゴラス帝国軍の練度は決して低くない。
「ファイヤーボール発射!」号令がかかり、船から幾つもの赤い光が放たれる。海より空へ吸い込まれるそれは、幻想的ですらあった。そして…。
「ファイヤーボール命中!敵機墜落します。」ファイヤーボールの1つが当たり、たくさんの羽が付いた竜は、バラバラになり海へ墜ちた。乗組員達の歓声が響き渡る。
「やりましたね、司令。司令?どうかなされましたか?」士官は敵機を撃墜したと言うのに、何やら考え込んでいる司令を心配する。
「あれが、白竜に勝てる筈がない。植民地制圧軍は、異形の巨竜に負けたと言う。もし、あれが巨竜の子供だとしたら…」
「北より何十もの光が接近してきます!」
船長は、我が目を疑った。まず、発艦した白竜全てに光が刺さり爆散した。その次は船団に、その光が舞い降り帝国の誇る戦列艦を、木屑へと変えてゆく。
「戦列艦アラドス、マルシス轟沈。竜母アマナミス沈没。報告が追い付きません。」
精強なアンゴラス帝国艦隊が、成す術もなく消えていく。何をどうすれば被害を抑えられるか、全く思いつかない。私は無能の将として歴史に名を刻むだろう。
「本艦に光の矢が接近、回避っ!回避を。」他の何十の船と同じ運命を、旗艦ルナも辿ったのであった。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~
鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合
戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる
事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる
その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊
中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。
終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人
小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である
劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。
しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。
上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。
ゆえに彼らは最前線に配備された
しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。
しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。
瀬能が死を迎えるとき
とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
異世界でホワイトな飲食店経営を
視世陽木
ファンタジー
定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。
彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。
彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。
しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!
ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?
異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!?
● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。
● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。
● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。
● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる