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混乱
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その日、日本は白い霧におおわれた。それと同時に、国外との連絡の一切が絶たれた。地下鉄以外の全ての交通機関は安全確保のためストップし、株価の急激な下落により株式市場も閉鎖された。2日後、霧は晴れたが国外との連絡は絶たれたままだ。
-----------------------日本 首相官邸
「霧が晴れれば通信が回復するのではなかったのか!」
怒鳴り声が部屋に響く。
「総理、私は白い霧が何らかの通信障害を引き起こしている可能性があると指摘しただけです。」
現在、新たに設置された特設対策室にて会議が行われている。内閣を構成する各大臣と、召集された科学者、技術者が討論を交わす。
「ならば、この通信障害の原因はなんだというのだ!」
「失礼ながら全く見当もつきません。」東京大学理工学部教授、佐藤彰は悲嘆にくれた表情をして答える。
「見当もつかないでは困ります。この混乱で株式市場は停止し、貿易もストップしています。この通信障害による経済的損失は数兆円にのぼるでしょう。」と経済産業相。
「飛行機も船も安全が確認できるまで航行を禁じておりますが、各所から反発が出ています。全く早く原因を特定してほしいものですな。巡視船すら哨戒活動を縮小しているのです。」と国土交通相
「我が方も航空機による哨戒は全面的に取り止め、護衛艦による哨戒は規模を縮小してやらせています。」と防衛相。
「そうは言われましても全く見当もつかないのです。日本周辺で電磁波が観測されているわけでもありませんし、何より国内通信は何一つ問題ないのです。国内でなく国外で何か起こったのではないでしょうか。」と教授。
「いいかげんなことを言うのは止めたまえ。」総理がまた怒鳴る。
ここで場違いな電子音が響く
「少しの間失礼いたします。」国土交通相がスマホを片手に駆け足でドアへ消えていく。そして数分後、彼は不可思議な情報と共に戻ってきたのだった。
「総理、よろしいでしょうか。」
「さっきの電話での件かね。」
「はい。国籍不明船、約100を巡視船が発見したとのことです。」
「このような時に」と総理が嘆く。
「現在船団は八丈島へ向け直進しているとのことです。無線にも応答しないようです。」
「日本国内での通信は問題ないとて海で試した訳ではない。その無線は届いているのかね。」
「不明です。」国土交通相は答える。
「届いてないのならば、後々問題になるな。それよりも100隻の不審船にどこかの国の武装漁民が乗り組んでいた場合対処できるのか?」
「八丈島付近を航行している別の巡視船も向かわせておりますがそれでも2隻にしかなりません。哨戒を縮小したせいですな。」教授に目をやりながらいう。
「それでも行かせるしかない。」総理は静かに呟く。
-----------------------
八丈島より南5kmの海域
「船長、10時の方向に船団を発見しました。100隻ほどいます。速度30ノット」全長43メートル、速度33ノットを誇るしんざん型巡視船のブリッジでレーダー観測員が報告する。
「30ノット?速いな。ただの漁船には出せん速度だ。まさか遭難したということはあるまい。心してかからねば。船団に転進するよう無線を送れ。それと管区本部へ連絡を入れろ。」船長は苛立たしげ言う。
「船団より返信なし。」通信員が答える。
「船団、目視可能距離まで30分。」レーダー観測員が報告する。
「送り続けろ。」何の反応も示さない船団に船長の焦りが募る。30分後、巡視船一隻が合流。もう30分たつ頃には船団は目視可能距離まで接近していた。
船長は双眼鏡を覗きこみ驚愕する。船団を構成するのは漁船ではなく帆船だった。しかも側面に大砲のある戦列艦だ。それが帆船に出せるはずもない速度で群れをなして接近してくる。しかしここで船長は考えを改める。帆船のような見た目を模しているだけの武装漁船の可能性もある。1隻や2隻であれば映画か何かの撮影用の船かもしれないと疑っただろう。しかしこの時期にこの数だ。何らかの悪意があるに違いない。
「何なのでしょうか。あの帆船は。」船長は同感だと思ったがやるべきことを果たす。
「帆船だろうが動力船だろうがやることは変わらん。スピーカーでも呼び掛けろ。」船長は命じる。
「それでも止まらなければどうします。」
「進路を塞ぐなり威嚇射撃なりするが、どちらにせよ近づかんことにはな。あの砲が本物だった場合に備えある程度の距離はとらねばならんが。まだ距離は十分ある。船団の反応を見よう。」
「船長、先頭船進路を変更。追随船も続きます。」
敵の砲が青く輝き出すのを見て船長は失敗を悟った。
「回避運動をと…」
「敵船、発砲」船長が言い終わらないうちに誰かが叫ぶ。
その直後、衝撃が船を襲い船長の意識は切れた。
-----------------------
日本国 八丈島 八重根港
貨物船や定期船は島の北東部にある大きな港を使う。なので島の南西部にある小さな港「八重根港」にはそれほど活気がない。しかし今日は違う。人で溢れかえっている。その理由は沖を見れば分かる。
「帆船なんて初めて見た。かっけー。しかも、めちゃめちゃいる。」
「何で帆船があんなに沢山いるんだろ?」
「映画の撮影かなんかじゃない?」
「本物の船を使うかよ。CGだよ。」
「巡視船邪魔だね。帆船が見えないや。」
まるで港はお祭り騒ぎであった。しかしそれは狂乱に変わることとなる。
突然、帆船から青い光が放たれ巡視船を包み込んだ。遅れて爆発音がこだまする。巡視船は2隻とも炎に包まれ急速に傾いてゆく。
悲鳴があちこちから轟く。
「にげろー」誰が言ったか、その一言で人々は内陸部へ我先にと走り出す。しかし狂乱は始まったばかりであった。
-----------------------
日本国 八丈島 八丈島警察署
「部長、なんか今日は騒がしいですね。」若い巡査が言う。
「八重根港から変わった船が見えるらしい。息子も見に行ってるよ。」
「そういや、子供は夏休みですもんね。羨ましいです。こっちは有給申請すらなかなか通らないですのに。」悲しげな表情を作り巡査が言う。
「まぁ、そういうな。クーラーがあるだけましじゃないか。窃盗犯を引き渡したら、またあの暑苦しい空間に戻るんだから。」巡査部長が笑いながら言う。
「何で交番にはクーラーがないんでしょうかね。絶対内勤の連中よりハードな仕事してるのに。」
「俺が署長になったらつけてやるよ。」
「それじゃあ永遠につかないじゃないですか。」にやけながら巡査が言う。
「ひでぇーな」苦笑する巡査部長。しかし馬鹿話は館内放送により打ち消される。
「全署員は第一会議室に集合してください」
「俺たちは、交番勤務だから署員では…」
「行くぞ!」巡査が言い終わらぬ内に巡査部長は歩みを進めるのだった。
----------------------
会議室には40人程の警察官がひしめいている。捜査部全員集合ならば理解できるが。署員全員とは何事だろう。さまざまな憶測がひそひそ囁かれる。署長が話を始める。
「急な呼び出しに困惑するものも多いだろう。率直に言う。八重根港へ万単位の武装集団が上陸。島民を殺害している。署員諸君には北部の島民を西山、南部の東山へ、底土港周辺の住民を島の外へ誘導してもらいたい。」ざわめきが大きくなる。署員の一人が手を挙げ質問する。
「発砲許可は出るのでしょうか。」
「許可する。しかし島民の避難が最優先だ。」
他の署員も質問する。
「体育館や市役所が緊急時の避難場所となっているはずですが。」
「現在島民を殺害しているのは「暴徒」ではなく規律だった「武装集団」だ。大きい建造物は真っ先に狙われるだろう。私から滅多な事は言えんが理解してもらいたい。では時間が惜しい。早速、避難誘導にあたってくれ。」
-----------------------
逃げ惑う島民、それを追う不思議な格好をした者達。そこかしこで爆発が起こり、煙が立ち込める。
「まさか、こんなことがこの島で起こるとはな。」巡査部長がしみじみ言う。
「全くです。」巡査も頷く。
数分歩いた後、道路沿いに島民の集団を見つける。
「皆さん、東山へ避難してください。」巡査部長が呼び掛ける。
「島の外に避難させてくれるんとちゃうのか!」島民の一人が言う。
「船の数が少なすぎます。今は、山に隠れる他ありません。」
「何で警察は今暴れとる奴等を逮捕せーへんねん。それがあんたらの仕事じゃろ」他の島民が叫ぶ。
「人数的に不可能です。何より相手は武装して…」巡査部長が言い終わらない内に爆発が起こる。
「逃げますよ。ついて来てください。」と巡査。
「生き残りがいたぞ!こっちだ!」声が後ろから響く。
そして、いくつもの爆発が起こり爆音が轟く。
「部長、しっかりしてください!部長!」下半身が消滅した上司に呼び掛けるが返事はなかった。
「くそっ!」とっさに巡査は、武装集団へ銃を射つ。しかしここで違和感に気付く。今さっき我々を攻撃したのは「武装集団」のはずなのに、彼らが持つのは武器と似つかぬ魔法の杖のようなもの。
「あいつらは、何者なんだ?」と巡査が思ったその直後、再び爆発が起こった。巡査は自分の意識が暗闇に沈んでゆくのを感じた。
地上は混乱を極め、それゆえ空を飛ぶ異様な物に気付く人は少なかった。
-----------------------
日本国 八丈島 底土港
「これ以上は待てん。出港だ!」貨物船あさひ丸の船長は言う。
「しかしまだ島民が残っています。」航海長は反論する。
「気持ちは分かる。だがかなり爆発音が近づいてきた。もう限界だ。」船長は苦虫を噛み締めたような表情を浮かべ言う。
「解りました。出航します。」人を詰め込めるだけ詰め込んだあさひ丸はゆっくりと桟橋から離れ、大海原を進みだした。島の街が赤い炎を上げ燃え盛るのが港からだとよく見える。燃える故郷から目を逸らそうと、上を見た島民が気付く。
「なんだありゃ?」島民の一人が指をさして言う。勇ましげに空を往く16匹の白い竜。それがきれいにならんで向かってくる。
「こっちにくるぞー!」他の島民も竜に気が付く。甲板は混乱状態になり船から落ちる者もででる。竜の口が一斉に赤く光り、何かがこちらへ翔んでくる。すぐ隣を走る連絡船。八ツ島丸が爆炎に包まれ、甲板上はさらに混乱を極めた。
「海に飛び込め。」
「飛び込んでどうするんだよ。島に戻るってのか?」
「いゃーーー!」
「また、竜の口が光ったぞー!」
とうとうファイアーボールがあさひ丸に命中し、容易く穴を開ける。浸水が始まり船が転覆するのに時間はかからなかった。
-----------------------日本国 首相官邸
科学者、技術者が追い払われたこの部屋に残る者の表情は暗い。
国土交通相が寄越した巡視船2隻の轟沈の報告。それで大騒ぎしているところに追い打ちを掛けるように、八丈島警察署より船から上陸してきた者達が島民を虐殺していると連絡があった。誰もが呆然とするしかなかった。
数分後、ようやく話ができる程度には気力を取り戻した総理が問う。
「彼らの国籍は判明したのか。やはり隣の国か?」
研究者と入れ替わりで入ってきた警視庁幹部は答える。
「国籍は判明しておりませんがその可能性は低いかと。警察署のからの連絡によると白人。それも年齢に関係なく髪の毛が白いようです。」
「それは確かなのですが?現場の混乱で情報が錯綜しているのでは?」と国土交通相
「ご存じの通り現地の警察署は連絡を絶っております。確認のしようがありません。」
「生存者の数も分からんのだな」と防衛相
「携帯各社へ通話記録の提出を求めました。2時間前まで通話が頻繁にありましたが今では1件も通話が行われていないそうです。島民は拘束されているかもしくは…」 言いよどむ警視庁幹部。
「いずれにしても島民は救出せねばな。防衛相、防衛出動を命令する。記者会見の用意もせねばな。」
「お待ち下さい。自衛隊を動かすなど周辺各国がどう反応するでしょうか。何より国会の議決を待たずとは…」と環境相。
「緊急時には事後承認でいいはずだ。」と総理 。
「警察力による解決はできないのですか。」反駁する環境相。
「結果は巡視船轟沈を見れば明らかだろう。他に何かあるかね。」環境相は口を開こうとするも総理に睨まれ押し黙る。
「では防衛相、計画をまとめておいてくれ。では、それぞれの仕事をしよう。」総理は記者会見の準備のため扉へ向かう。
-----------------------日本 首相官邸
「霧が晴れれば通信が回復するのではなかったのか!」
怒鳴り声が部屋に響く。
「総理、私は白い霧が何らかの通信障害を引き起こしている可能性があると指摘しただけです。」
現在、新たに設置された特設対策室にて会議が行われている。内閣を構成する各大臣と、召集された科学者、技術者が討論を交わす。
「ならば、この通信障害の原因はなんだというのだ!」
「失礼ながら全く見当もつきません。」東京大学理工学部教授、佐藤彰は悲嘆にくれた表情をして答える。
「見当もつかないでは困ります。この混乱で株式市場は停止し、貿易もストップしています。この通信障害による経済的損失は数兆円にのぼるでしょう。」と経済産業相。
「飛行機も船も安全が確認できるまで航行を禁じておりますが、各所から反発が出ています。全く早く原因を特定してほしいものですな。巡視船すら哨戒活動を縮小しているのです。」と国土交通相
「我が方も航空機による哨戒は全面的に取り止め、護衛艦による哨戒は規模を縮小してやらせています。」と防衛相。
「そうは言われましても全く見当もつかないのです。日本周辺で電磁波が観測されているわけでもありませんし、何より国内通信は何一つ問題ないのです。国内でなく国外で何か起こったのではないでしょうか。」と教授。
「いいかげんなことを言うのは止めたまえ。」総理がまた怒鳴る。
ここで場違いな電子音が響く
「少しの間失礼いたします。」国土交通相がスマホを片手に駆け足でドアへ消えていく。そして数分後、彼は不可思議な情報と共に戻ってきたのだった。
「総理、よろしいでしょうか。」
「さっきの電話での件かね。」
「はい。国籍不明船、約100を巡視船が発見したとのことです。」
「このような時に」と総理が嘆く。
「現在船団は八丈島へ向け直進しているとのことです。無線にも応答しないようです。」
「日本国内での通信は問題ないとて海で試した訳ではない。その無線は届いているのかね。」
「不明です。」国土交通相は答える。
「届いてないのならば、後々問題になるな。それよりも100隻の不審船にどこかの国の武装漁民が乗り組んでいた場合対処できるのか?」
「八丈島付近を航行している別の巡視船も向かわせておりますがそれでも2隻にしかなりません。哨戒を縮小したせいですな。」教授に目をやりながらいう。
「それでも行かせるしかない。」総理は静かに呟く。
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八丈島より南5kmの海域
「船長、10時の方向に船団を発見しました。100隻ほどいます。速度30ノット」全長43メートル、速度33ノットを誇るしんざん型巡視船のブリッジでレーダー観測員が報告する。
「30ノット?速いな。ただの漁船には出せん速度だ。まさか遭難したということはあるまい。心してかからねば。船団に転進するよう無線を送れ。それと管区本部へ連絡を入れろ。」船長は苛立たしげ言う。
「船団より返信なし。」通信員が答える。
「船団、目視可能距離まで30分。」レーダー観測員が報告する。
「送り続けろ。」何の反応も示さない船団に船長の焦りが募る。30分後、巡視船一隻が合流。もう30分たつ頃には船団は目視可能距離まで接近していた。
船長は双眼鏡を覗きこみ驚愕する。船団を構成するのは漁船ではなく帆船だった。しかも側面に大砲のある戦列艦だ。それが帆船に出せるはずもない速度で群れをなして接近してくる。しかしここで船長は考えを改める。帆船のような見た目を模しているだけの武装漁船の可能性もある。1隻や2隻であれば映画か何かの撮影用の船かもしれないと疑っただろう。しかしこの時期にこの数だ。何らかの悪意があるに違いない。
「何なのでしょうか。あの帆船は。」船長は同感だと思ったがやるべきことを果たす。
「帆船だろうが動力船だろうがやることは変わらん。スピーカーでも呼び掛けろ。」船長は命じる。
「それでも止まらなければどうします。」
「進路を塞ぐなり威嚇射撃なりするが、どちらにせよ近づかんことにはな。あの砲が本物だった場合に備えある程度の距離はとらねばならんが。まだ距離は十分ある。船団の反応を見よう。」
「船長、先頭船進路を変更。追随船も続きます。」
敵の砲が青く輝き出すのを見て船長は失敗を悟った。
「回避運動をと…」
「敵船、発砲」船長が言い終わらないうちに誰かが叫ぶ。
その直後、衝撃が船を襲い船長の意識は切れた。
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日本国 八丈島 八重根港
貨物船や定期船は島の北東部にある大きな港を使う。なので島の南西部にある小さな港「八重根港」にはそれほど活気がない。しかし今日は違う。人で溢れかえっている。その理由は沖を見れば分かる。
「帆船なんて初めて見た。かっけー。しかも、めちゃめちゃいる。」
「何で帆船があんなに沢山いるんだろ?」
「映画の撮影かなんかじゃない?」
「本物の船を使うかよ。CGだよ。」
「巡視船邪魔だね。帆船が見えないや。」
まるで港はお祭り騒ぎであった。しかしそれは狂乱に変わることとなる。
突然、帆船から青い光が放たれ巡視船を包み込んだ。遅れて爆発音がこだまする。巡視船は2隻とも炎に包まれ急速に傾いてゆく。
悲鳴があちこちから轟く。
「にげろー」誰が言ったか、その一言で人々は内陸部へ我先にと走り出す。しかし狂乱は始まったばかりであった。
-----------------------
日本国 八丈島 八丈島警察署
「部長、なんか今日は騒がしいですね。」若い巡査が言う。
「八重根港から変わった船が見えるらしい。息子も見に行ってるよ。」
「そういや、子供は夏休みですもんね。羨ましいです。こっちは有給申請すらなかなか通らないですのに。」悲しげな表情を作り巡査が言う。
「まぁ、そういうな。クーラーがあるだけましじゃないか。窃盗犯を引き渡したら、またあの暑苦しい空間に戻るんだから。」巡査部長が笑いながら言う。
「何で交番にはクーラーがないんでしょうかね。絶対内勤の連中よりハードな仕事してるのに。」
「俺が署長になったらつけてやるよ。」
「それじゃあ永遠につかないじゃないですか。」にやけながら巡査が言う。
「ひでぇーな」苦笑する巡査部長。しかし馬鹿話は館内放送により打ち消される。
「全署員は第一会議室に集合してください」
「俺たちは、交番勤務だから署員では…」
「行くぞ!」巡査が言い終わらぬ内に巡査部長は歩みを進めるのだった。
----------------------
会議室には40人程の警察官がひしめいている。捜査部全員集合ならば理解できるが。署員全員とは何事だろう。さまざまな憶測がひそひそ囁かれる。署長が話を始める。
「急な呼び出しに困惑するものも多いだろう。率直に言う。八重根港へ万単位の武装集団が上陸。島民を殺害している。署員諸君には北部の島民を西山、南部の東山へ、底土港周辺の住民を島の外へ誘導してもらいたい。」ざわめきが大きくなる。署員の一人が手を挙げ質問する。
「発砲許可は出るのでしょうか。」
「許可する。しかし島民の避難が最優先だ。」
他の署員も質問する。
「体育館や市役所が緊急時の避難場所となっているはずですが。」
「現在島民を殺害しているのは「暴徒」ではなく規律だった「武装集団」だ。大きい建造物は真っ先に狙われるだろう。私から滅多な事は言えんが理解してもらいたい。では時間が惜しい。早速、避難誘導にあたってくれ。」
-----------------------
逃げ惑う島民、それを追う不思議な格好をした者達。そこかしこで爆発が起こり、煙が立ち込める。
「まさか、こんなことがこの島で起こるとはな。」巡査部長がしみじみ言う。
「全くです。」巡査も頷く。
数分歩いた後、道路沿いに島民の集団を見つける。
「皆さん、東山へ避難してください。」巡査部長が呼び掛ける。
「島の外に避難させてくれるんとちゃうのか!」島民の一人が言う。
「船の数が少なすぎます。今は、山に隠れる他ありません。」
「何で警察は今暴れとる奴等を逮捕せーへんねん。それがあんたらの仕事じゃろ」他の島民が叫ぶ。
「人数的に不可能です。何より相手は武装して…」巡査部長が言い終わらない内に爆発が起こる。
「逃げますよ。ついて来てください。」と巡査。
「生き残りがいたぞ!こっちだ!」声が後ろから響く。
そして、いくつもの爆発が起こり爆音が轟く。
「部長、しっかりしてください!部長!」下半身が消滅した上司に呼び掛けるが返事はなかった。
「くそっ!」とっさに巡査は、武装集団へ銃を射つ。しかしここで違和感に気付く。今さっき我々を攻撃したのは「武装集団」のはずなのに、彼らが持つのは武器と似つかぬ魔法の杖のようなもの。
「あいつらは、何者なんだ?」と巡査が思ったその直後、再び爆発が起こった。巡査は自分の意識が暗闇に沈んでゆくのを感じた。
地上は混乱を極め、それゆえ空を飛ぶ異様な物に気付く人は少なかった。
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日本国 八丈島 底土港
「これ以上は待てん。出港だ!」貨物船あさひ丸の船長は言う。
「しかしまだ島民が残っています。」航海長は反論する。
「気持ちは分かる。だがかなり爆発音が近づいてきた。もう限界だ。」船長は苦虫を噛み締めたような表情を浮かべ言う。
「解りました。出航します。」人を詰め込めるだけ詰め込んだあさひ丸はゆっくりと桟橋から離れ、大海原を進みだした。島の街が赤い炎を上げ燃え盛るのが港からだとよく見える。燃える故郷から目を逸らそうと、上を見た島民が気付く。
「なんだありゃ?」島民の一人が指をさして言う。勇ましげに空を往く16匹の白い竜。それがきれいにならんで向かってくる。
「こっちにくるぞー!」他の島民も竜に気が付く。甲板は混乱状態になり船から落ちる者もででる。竜の口が一斉に赤く光り、何かがこちらへ翔んでくる。すぐ隣を走る連絡船。八ツ島丸が爆炎に包まれ、甲板上はさらに混乱を極めた。
「海に飛び込め。」
「飛び込んでどうするんだよ。島に戻るってのか?」
「いゃーーー!」
「また、竜の口が光ったぞー!」
とうとうファイアーボールがあさひ丸に命中し、容易く穴を開ける。浸水が始まり船が転覆するのに時間はかからなかった。
-----------------------日本国 首相官邸
科学者、技術者が追い払われたこの部屋に残る者の表情は暗い。
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数分後、ようやく話ができる程度には気力を取り戻した総理が問う。
「彼らの国籍は判明したのか。やはり隣の国か?」
研究者と入れ替わりで入ってきた警視庁幹部は答える。
「国籍は判明しておりませんがその可能性は低いかと。警察署のからの連絡によると白人。それも年齢に関係なく髪の毛が白いようです。」
「それは確かなのですが?現場の混乱で情報が錯綜しているのでは?」と国土交通相
「ご存じの通り現地の警察署は連絡を絶っております。確認のしようがありません。」
「生存者の数も分からんのだな」と防衛相
「携帯各社へ通話記録の提出を求めました。2時間前まで通話が頻繁にありましたが今では1件も通話が行われていないそうです。島民は拘束されているかもしくは…」 言いよどむ警視庁幹部。
「いずれにしても島民は救出せねばな。防衛相、防衛出動を命令する。記者会見の用意もせねばな。」
「お待ち下さい。自衛隊を動かすなど周辺各国がどう反応するでしょうか。何より国会の議決を待たずとは…」と環境相。
「緊急時には事後承認でいいはずだ。」と総理 。
「警察力による解決はできないのですか。」反駁する環境相。
「結果は巡視船轟沈を見れば明らかだろう。他に何かあるかね。」環境相は口を開こうとするも総理に睨まれ押し黙る。
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→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
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日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。
歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。
そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。
「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。
そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。
制刻を始めとする異質な隊員等。
そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。
元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。
〇案内と注意
1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。
3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。
4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。
5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
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辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
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『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
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