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第三話 夢でいいから

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お兄ちゃんに抱きしめてもらった、その日の夜。
私は、悪夢を見た。

それは、私の事を好きになったお兄ちゃんにぐちゃぐちゃに犯される夢。

なぜか自分の部屋にあるベッドの上に二人でいて、
部屋から逃げ出せなくて。
気が狂うほどの時間イカされ続けて、いろんな所を撫でられて愛され続ける夢。

「おにい……ちゃん……何回もイッたから許して……」
「嫌だ。お前が気持ちいいの我慢してる顔が、かわいくて好きなんだ」

そう言うと冬木お兄ちゃんは、私のクリトリスを指でこねくり回した。
絶頂したばかりの私はただでさえ全身敏感なのに。

「あ゛っ♡おにいちゃ♡そこだめ!だめなのっ゛♡」
「麻衣は恥ずかしがってるのも可愛いな」
「ううっ~!」

丁寧に、しかしじっくりとクリトリスをしごかれる。
もちろん、大好きな兄に言葉責めされながら。

「麻衣はクリも胸も弱いんだな」
「まって、ちょっと、休憩……」
「駄目に決まってるだろ?」

耳元で優しく囁かれ、体も心も芯までとろけさせられる。

「奥を指でとんとんされるの、好きだったもんな」
「いっ!イっちゃうから……!もう我慢できないからやめ……」
「駄目だ。お前は俺の妹なんだから、俺の言うこと聞かなきゃだめだぞ?」

膣の奥のほうまで指を入れられ、ゆっくりと、しかし確実に気持ちいいところを刺激される。

「あっ、あっ、ああっ!」
「だらしなくイっちゃっていいんだぞ?ほら、我慢しないで」

何度も、何度も快感で意識が飛びかける。
その度、お兄ちゃんは私の一番気持ちいい所を刺激して、
私の意識を強制的に戻す。

絶頂で喘ぎすぎて喉が枯れそうだった。
それからは地獄だった。

イキ狂わされたかと思えば、今度は何度も寸止めで焦らされる。その繰り返し。

どれくらいの時間が経っただろうか。

体感3時間くらいは連続で気持ちよくされ続けた後、お兄ちゃんは私にやさしく声をかけてくれた。

「麻衣、世界で一番愛してるぞ」
「お兄ちゃん……私もだよ」

深い安心感と幸福感に、体も心も包まれるのが分かった。
好きな人と両想いになれるのが、こんなに嬉しいことだなんて。

「大好き」
「俺もだよ」

二人で抱き合って、目を閉じた。
もう何も、怖くない気がした。



……そこで、私は起きた。
さっきのは、夢だったのだと気が付くまでにしばらく時間がかかった。

甘い悪夢だった。
私にありもしない希望と、満たされることのない欲望だけを植え付ける悪夢。

「そっか、夢だったのか……」

そうだ。
私は兄に、女として見られてすらいない。

私が兄に性的な目を向けてもらえることなど、
天地がひっくり返ってもありえない事なのに。

兄が私とのデートを承諾してくれたのは、家族の情が残っていたからだ。
決して、私の事を意識してくれただとかではない。ましてや好きになってなどいない。

むしろ、内心気持ち悪いと思われている可能性だってまだあるのだ。

「う、うう、あああああ!」

嫌われているかもしれないと思ったら、止めたはずの涙がまた溢れてきた。
夢ではあんなに愛し合ったのに。
現実では兄に恋慕を抱くことすら異常だ。
どこにもぶつけようのない悲しみが来る。止めどなく。

「なんで、なんで!」

私は、神様を呪った。
なんで私とお兄ちゃんを、血のつながった兄妹なんかにしたんですか。
なんで私は、実の兄に本気で恋をしてしまったんですか。
なんで私は、普通の恋愛もできずに兄に迷惑をかけているんですか。

「麻衣!大丈夫か……!」
「おにい、ちゃん」

私の叫び声が聞こえてしまったのだろう。
もう起きていたお兄ちゃんが、私の部屋に入ってきた。

「ごめんなさい、ごめんなさい」
「どうした……俺についての事か?」

お兄ちゃんは、人の困りごとにすぐ対処してくれることが多い。
よく人を見ているのだろう。

でも、今だけはこんなみじめな私を見ないで欲しかった。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「どうした、お前が謝る事なんて何もないだろ」
「あるの、いっぱい」

お兄ちゃんに迷惑かけてごめんなさい。
お兄ちゃんで興奮してごめんなさい。
実の妹なのに『好き』だなんて気持ち悪いこと告白してごめんなさい。

でも、辛すぎて言葉にできない。私が弱いから。

「お兄ちゃん、もう、もう大丈夫だから。私、大丈夫、だから」

お兄ちゃんの前では、可愛くて良い妹でいたい。
全部ばれた今でも、そう思ってる。
だから。

「お兄ちゃん、一人にして……お願い」
「うん、ああ、わかった」

お兄ちゃんがこちらを心配そうに見るので、無理して微笑む。
表情を変えたら、こらえていた涙がこぼれた。
兄は私の頬を伝うそれをハンカチで拭うと、
語りかけるような口調で話し始めた。

「麻衣」
「なに?」
「辛くなったら、俺でも他のだれかでもいいから、ちゃんと『助けて』って言うんだぞ」
「……わかった」

兄はいつも以上に優しくて、それがかえって私には痛みになった。
いつも優しくて素敵な兄に振り向いてもらうには、どれだけ努力したらいいのだろう。

朝から倦怠感が体を支配しているのは、睡眠の質の問題では無いだろう。
引っ越した時からそのままのピンク色の壁紙を背に、ため息をつく。


「私、子供だな」

もし、私たちの運命を司る神様が、この世にいるなら。
その人はすごく意地悪で、どうしようもなくひねくれ者に違いない。

でも、それでも、私は神様にお願いするしかなかった。
だって、兄と妹が結ばれるには神頼みくらいしか方法が無いから。

自分でも、馬鹿だなと思う。

それでも、心の底から絞り出すように願う。

「どうか、兄と愛し合いながら一生を一緒に過ごせますように」

願いは吐いた息と共に、空に消えていって。
私はまた、部屋で一人泣いていた。
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