Magic Loaders

hoge1e3

文字の大きさ
上 下
11 / 53
第1章 はじめよう、Magic Loadersのいる暮らし

●第10話 徹夜するMagic Loader

しおりを挟む
 ええと、俺何してたんだっけ。記憶喪失とかじゃなくてただのど忘れ。ああそうそう、俺はイサキスとともに、トリプルローデッドの杖、つまり一本の杖に3種類の魔法を呪胎させた杖を作る実験をはじめたんでした。

 まずはブランクの杖を用意する。
「さあ、俺が今から一つ目の魔法を呪胎させるから、いい感じのところでツェデをしてくれ」
「なんだい、いい感じて」
 説明が明らかに足りていないのだが、イサキスが何やら唱えはじめたので、なんとなくいい感じになったところで、ツェデの杖に力を込めた。
「そう、いい感じだ」
 おう、それなら何よりだ。
「それから、こうなったらツェデツェデ、ああなったら、ツェデツェデツェデだ、いいな」
「うん、そうなったらツェデツェデツェデのツェデツェデで、どうなったらツェデのツェデか?」
「いいぞ」

 すっかり蚊帳の外のアシジーモは、移動中以外はなかなか見せ場がないバウザスに向かって、何か俺らの陰口でもたたいているようだ。
「お前、ご主人様は選んだほうがいいぜ……」

 すっかり日も傾いてきたが、
「カギン、ダメだってばー、いい感じじゃないところでツェデしたら……あーあ、何にも呪胎されてないじゃんか」
 案の定、いい感じかどうかだけでそんなにうまく実験は進まなかった。

「なんか知らないけど、新しいお友達ができたみたいでよかったじゃないの、ほれ、夕ごはんも食べてきな」
 と言って、昼飯をくれたおばちゃんが夕飯まで作ってくれたのだった。

 食べながらも、俺はイサキスと議論していた
「イサキス、いくらカル様とやらのためでも焦りすぎじゃないか? とりあえず、まずは二人で、トリプルじゃなくてデュアルローデッドを目指そうぜ」
「えーっ、そうか?」
「で、うまく行ったらトリプルローデッドにするために、どこをどう変えればいいか試すんだ」
 俺たちは夜どおし実験を続けた。

―――――†―――――

 朝になっていた。
 いつの間に、俺は寝落ちしてしまったのか……だって、ツェデツェデって、ずっと同じ魔法ばっかり使わされたから飽きちゃったんだよ……ともかく俺は一本をトリプルローデッドできたところまでは見届けたはずだ……それから、やり方がわかったイサキスが一人でもう一本作ったのだろう……
「イヤッホーい、できたぞー!」
 と、両の手で2本のトリプルローデッドを頭上に高く掲げて、くるくる回転させるなど、一人テンション高いイサキスであったが、よく寝たはずのアシジーモもバウザスも冷ややかな目で見ているし、俺はやっぱり眠いし……うっ、

 気づいたら、俺はバウザスの背中に乗って飛んでいた。どうやら、アシジーモにザガリスタ――カル様とやらがいる町――の場所だけ教えられたらしく、運んでいけといわれたらしい。
 しばらくすると、なんか町? 村? らしいものが見えたので、降りてみることにする。

 ……町かとおもったが、誰もいない。荒れ果てているし。これは、アレか、魔物たちに滅ぼされたとかいう村かもしれない。絶対そうだ。
 おそらく、アシジーモとイサキスは後からついてくるだろうと思って、崩れ去った家の跡などを見学してみよう。
 ひとしきり目ぼしいところを見ていたら、かつて村の広場とおぼしき場所が見えたので、そちらに足を運んでいると、
「おーい、カギン、何やってる?」
 アシジーモとイサキスはわりとすぐ追いついてきた。この村は何なのかを聞いてみると、
「ここゾルゾーサは……魔物かなんかに滅ぼされたんだろ」
「へーそうか」珍しくその通りだった。俺は広場のほうに向かって行った。
「おい、寄り道しないでさっさと行くんだ!」
「そうだそうだ、早くカル様に会いにいかないとー!」
 広場に出た。ここではかつて何が行われていたのか……草むした広場には大きな幾何学模様が書かれていた。
「……六芒星か」
 とかぶつぶつ言ってたら、アシジーモとイサキスにひどく睨まれた。なんだよ寄り道したくらいで。

―――――†―――――

 なにやらすごい城壁が見えてきた。これがザガリスタの町か。なかなかの迫力であるが、バウザスの飛翔力なら軽々と飛び越せそうだ。
「待て、カギン! 壁を超えるな!」
 と、アシジーモが呼び止められた。
「えー、なんで?」
「勝手に壁を越えたら、ゾジェイと間違われて狙われるぞ!」
 ゾジェイ? なんだか知らんが仕方なく、バウザスには城壁の外で待っているように頼んだ。すまんバウザス、昨日からずっと待たせてる気がする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】王太子妃の初恋

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。 王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。 しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。 そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。 ★ざまぁはありません。 全話予約投稿済。 携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。 報告ありがとうございます。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...