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Chapter 2
90*刺客
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「一旦、城へ戻るぞ」
ナタリーの問いかけに、一切答えないままダニエルは静かに言った。
その表情から、ナタリーも静かにその指示に従う。
ダニエルと共に、城へ戻ったアレキサンダーとナタリーはそのまますぐに王太子であるクリストファーの元へと案内された。
そして、ダニエルは開口一番…
吐き捨てる様に言った。
「一族諸共殲滅する」
「「「!?」」」
その言葉に、クリストファーはハッとした表情になり、アレキサンダーは眉間に皺を寄せた。
この中で唯一、ナタリーだけが現状を理解できていなかったが、一つだけハッキリと分かることがあった。
それは、"この3人はアシュリーを連れ去った犯人を知っている"と、いう事だ。
ナタリーの中で、沸々とした怒りが湧き上がってくる。
知っているのなら、何故動かないのか?何故助けに行かないのか?
攫われたのは誰でもない、アシュリーなのに…
そう思い、兄であるダニエルを見ればクリストファーと何か言い争いをしている。
側では、益々難しい表情をしたアレキサンダーが黙って2人の話を聞いている様子だった。
暫くして、見兼ねた王太子付きの執事がナタリーへお茶を差し出してきた。
彼は、申し訳なさそうにお茶を差し出すと「アシュリー様が一刻も早く見つかるといいですね」と、心配そうに声をかけてくれた。「ありがとう」と、返事をすればニコッと微笑んで部屋を後にする。
扉がゆっくりと閉まり、執事の姿が見えなくなるとほぼ同時に、トスッ!と何が刺さる音が部屋の中に響いた。
咄嗟に、ダニエルは剣を抜き王族を庇う様に構えた。
クリストファーとアレキサンダーも、隠し持っていた武器に手を添える。
そして、3人は目の前で起きている状況に大きく目を見開いた。
「遅いですわよ、お兄様」
振り返ったダニエルが見た先には、暗器で首を掻き切られた死体が床に転がっていた。
そして驚くべきことに、ナタリーはもう1人の大柄な男を無傷のまま拘束していたのだ。
刺客と思わしき男が投げたナイフは、ナタリーの投げたティーカップのソーサーで相殺され壁に突き刺さっていた。本来ならば、王族のどちらかを狙って投げたのだろう。
ダニエルも、早々に殺気に気付いていたのだがナタリーの方が一足早かったのだ。
そして、彼女は令嬢らしく優雅に問う。
「吐かせるのは、お任せしてもよろしいかしら?」
*
結果として、刺客を差し向けられたのはクリストファーであり、残念なことにアシュリーの失踪とは何の関係性もなかった。
ただし、刺客を差し向けた人物は特定でき、その人物がアシュリー失踪に大いに関わっていたのだ。
“名門貴族エストニア侯爵”
クリストファーの、かつての婚約者候補筆頭だった女性の父親であり、ダニエルが『一族諸共殲滅する』と宣言した家門だった。
ナタリーの問いかけに、一切答えないままダニエルは静かに言った。
その表情から、ナタリーも静かにその指示に従う。
ダニエルと共に、城へ戻ったアレキサンダーとナタリーはそのまますぐに王太子であるクリストファーの元へと案内された。
そして、ダニエルは開口一番…
吐き捨てる様に言った。
「一族諸共殲滅する」
「「「!?」」」
その言葉に、クリストファーはハッとした表情になり、アレキサンダーは眉間に皺を寄せた。
この中で唯一、ナタリーだけが現状を理解できていなかったが、一つだけハッキリと分かることがあった。
それは、"この3人はアシュリーを連れ去った犯人を知っている"と、いう事だ。
ナタリーの中で、沸々とした怒りが湧き上がってくる。
知っているのなら、何故動かないのか?何故助けに行かないのか?
攫われたのは誰でもない、アシュリーなのに…
そう思い、兄であるダニエルを見ればクリストファーと何か言い争いをしている。
側では、益々難しい表情をしたアレキサンダーが黙って2人の話を聞いている様子だった。
暫くして、見兼ねた王太子付きの執事がナタリーへお茶を差し出してきた。
彼は、申し訳なさそうにお茶を差し出すと「アシュリー様が一刻も早く見つかるといいですね」と、心配そうに声をかけてくれた。「ありがとう」と、返事をすればニコッと微笑んで部屋を後にする。
扉がゆっくりと閉まり、執事の姿が見えなくなるとほぼ同時に、トスッ!と何が刺さる音が部屋の中に響いた。
咄嗟に、ダニエルは剣を抜き王族を庇う様に構えた。
クリストファーとアレキサンダーも、隠し持っていた武器に手を添える。
そして、3人は目の前で起きている状況に大きく目を見開いた。
「遅いですわよ、お兄様」
振り返ったダニエルが見た先には、暗器で首を掻き切られた死体が床に転がっていた。
そして驚くべきことに、ナタリーはもう1人の大柄な男を無傷のまま拘束していたのだ。
刺客と思わしき男が投げたナイフは、ナタリーの投げたティーカップのソーサーで相殺され壁に突き刺さっていた。本来ならば、王族のどちらかを狙って投げたのだろう。
ダニエルも、早々に殺気に気付いていたのだがナタリーの方が一足早かったのだ。
そして、彼女は令嬢らしく優雅に問う。
「吐かせるのは、お任せしてもよろしいかしら?」
*
結果として、刺客を差し向けられたのはクリストファーであり、残念なことにアシュリーの失踪とは何の関係性もなかった。
ただし、刺客を差し向けた人物は特定でき、その人物がアシュリー失踪に大いに関わっていたのだ。
“名門貴族エストニア侯爵”
クリストファーの、かつての婚約者候補筆頭だった女性の父親であり、ダニエルが『一族諸共殲滅する』と宣言した家門だった。
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