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Chapter 2
87*消えたアシュリー
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前世で観ていた、漫画の様な都合のいいものなんて持ち合わせていない。
双子だからと言って、相手とテレパシーなんてできない。
神を呪った…
どうせ転生させるなら、チート能力をつけてくれと…
*
「一体どうゆうことだ!?」
バンッ!と、扉が吹っ飛びそうな勢いで開けて入ってきたのは父ライウスだった。
その後に、兄ダニエルも続く。
「早く報告しろ!」
「は、はいっ…!
従者が予定通り、王城にお迎えに上がった際、侍女から『王妃様との衣装合わせが延びているため、城から出す馬車にて送り届ける』と言われたそうです。その為、迎えは不要で帰っていいと…
もちろん、アシュリーお嬢様本人に確認を!と求めたところ『これは、王妃様の命です』と有無なく言い渡された為、急ぎ戻ってきたそうです。
そして、先に戻られていた奥様に確認したところ『衣装合わせは既に終わっており、皆で昼食も頂き部屋を出た』と伺ったため、慌てて戻るも…
王城内で、お嬢様の姿を確認することが出来ませんでした…」
「…っ!」
「あなた…」
「っ!ミリアーナ、一体何があったのだ!?」
夫であるライウスの問いに、ミリアーナは首を横に振るだけだった。
そう、ミリアーナも何が起きているのかわからなかったのだ。
予定通り、出来上がった衣装を届け、その場で試着してもらい最終確認を行った。そして、特に修正も必要ないと完成したドレスを絶賛され、ミリアーナとアシュリーはそのまま王妃様と共に昼食を頂いた。
そして、その後…
王妃様とミリアーナは、他の貴族夫人達とのお茶会に出席。
アシュリーは、もう1人の注文者であるアレキサンダーの元へと衣装を届けに行ったのだ。ただし、アレキサンダーは元々不在と聞いていた為、本当にただ衣装を届けただけだった。
後は、そのまま帰路につくだけなのだが…
アレキサンダーの宮では、アシュリーから衣装を受け取った従者が『私が受け取った後、すぐお帰りになりました』と証言している。
それに、実際調べたところ他の侍女たちも馬車乗り場に向かうアシュリーの姿を目撃していた。
アレキサンダーの宮から、王城の馬車乗り場までは歩いて数分であり、この短い時間で護身ができるアシュリーを無理やり連れ去ったなどとは考えにくい。
その為、誰もがこの状況を理解することができなかった。
「ナタリーは?ナタリーはどうした?」
ふと、この場にナタリーがいない事を不安に感じたダニエルが声を上げた。
「あの子は、エリザベスと共に心当たりを探してみると言って出て行ったわ」
そう話すミリアーナに、ダニエルの不安は更に強くなっていく。
「2人で行かせたのですか!?」
万が一、辺境伯家への恨みであればアシュリーだけでなく、エリザベスやナタリーにも危害が及ぶ恐れがある。そう危惧したダニエルは、ギュと拳を握りしめた。
しかし、ミリアーナは心配しなくても大丈夫だと言わんばかりに、首を横に振った。
「ダニエル、大丈夫よ。もちろん護衛もつけているし、何よりサイラス様が付いていますから。安心なさい」
「そ、そうですか…」
それなら安心だと、ダニエルはふっと息を吐いた。
その横で、ライウスも同じ様に息を吐いていた。
その様子に、普段はもちろん隣国が攻めてきた時でさえ顔色ひとつ変えずに、冷静に指示を出していたライウスが、ひどく狼狽えていることがわかる。
彼にとって、我が子が連れ去られるのはこれで2度目なのだ。しかも、また双子だ。
彼女達は、攫われたショックで当時の事は漠然としか覚えていない。だから、誰も教えることはしなかったし、あえて言わなかったのだ。
彼女達が、まるでペットの様に首輪をつけられ、鎖で檻に縛り付けられていた事を…
そして、そんな状況の双子を見つけた時のライウスの心情など想像に絶するだろう。この時、始めて彼の中で怒りと恐怖が芽生えたのだから。
誰もが1番恐れていた事が、今起きている。
辺境伯家にはどうにも出来ないほどピリピリとした空気感が漂っていた。
双子だからと言って、相手とテレパシーなんてできない。
神を呪った…
どうせ転生させるなら、チート能力をつけてくれと…
*
「一体どうゆうことだ!?」
バンッ!と、扉が吹っ飛びそうな勢いで開けて入ってきたのは父ライウスだった。
その後に、兄ダニエルも続く。
「早く報告しろ!」
「は、はいっ…!
従者が予定通り、王城にお迎えに上がった際、侍女から『王妃様との衣装合わせが延びているため、城から出す馬車にて送り届ける』と言われたそうです。その為、迎えは不要で帰っていいと…
もちろん、アシュリーお嬢様本人に確認を!と求めたところ『これは、王妃様の命です』と有無なく言い渡された為、急ぎ戻ってきたそうです。
そして、先に戻られていた奥様に確認したところ『衣装合わせは既に終わっており、皆で昼食も頂き部屋を出た』と伺ったため、慌てて戻るも…
王城内で、お嬢様の姿を確認することが出来ませんでした…」
「…っ!」
「あなた…」
「っ!ミリアーナ、一体何があったのだ!?」
夫であるライウスの問いに、ミリアーナは首を横に振るだけだった。
そう、ミリアーナも何が起きているのかわからなかったのだ。
予定通り、出来上がった衣装を届け、その場で試着してもらい最終確認を行った。そして、特に修正も必要ないと完成したドレスを絶賛され、ミリアーナとアシュリーはそのまま王妃様と共に昼食を頂いた。
そして、その後…
王妃様とミリアーナは、他の貴族夫人達とのお茶会に出席。
アシュリーは、もう1人の注文者であるアレキサンダーの元へと衣装を届けに行ったのだ。ただし、アレキサンダーは元々不在と聞いていた為、本当にただ衣装を届けただけだった。
後は、そのまま帰路につくだけなのだが…
アレキサンダーの宮では、アシュリーから衣装を受け取った従者が『私が受け取った後、すぐお帰りになりました』と証言している。
それに、実際調べたところ他の侍女たちも馬車乗り場に向かうアシュリーの姿を目撃していた。
アレキサンダーの宮から、王城の馬車乗り場までは歩いて数分であり、この短い時間で護身ができるアシュリーを無理やり連れ去ったなどとは考えにくい。
その為、誰もがこの状況を理解することができなかった。
「ナタリーは?ナタリーはどうした?」
ふと、この場にナタリーがいない事を不安に感じたダニエルが声を上げた。
「あの子は、エリザベスと共に心当たりを探してみると言って出て行ったわ」
そう話すミリアーナに、ダニエルの不安は更に強くなっていく。
「2人で行かせたのですか!?」
万が一、辺境伯家への恨みであればアシュリーだけでなく、エリザベスやナタリーにも危害が及ぶ恐れがある。そう危惧したダニエルは、ギュと拳を握りしめた。
しかし、ミリアーナは心配しなくても大丈夫だと言わんばかりに、首を横に振った。
「ダニエル、大丈夫よ。もちろん護衛もつけているし、何よりサイラス様が付いていますから。安心なさい」
「そ、そうですか…」
それなら安心だと、ダニエルはふっと息を吐いた。
その横で、ライウスも同じ様に息を吐いていた。
その様子に、普段はもちろん隣国が攻めてきた時でさえ顔色ひとつ変えずに、冷静に指示を出していたライウスが、ひどく狼狽えていることがわかる。
彼にとって、我が子が連れ去られるのはこれで2度目なのだ。しかも、また双子だ。
彼女達は、攫われたショックで当時の事は漠然としか覚えていない。だから、誰も教えることはしなかったし、あえて言わなかったのだ。
彼女達が、まるでペットの様に首輪をつけられ、鎖で檻に縛り付けられていた事を…
そして、そんな状況の双子を見つけた時のライウスの心情など想像に絶するだろう。この時、始めて彼の中で怒りと恐怖が芽生えたのだから。
誰もが1番恐れていた事が、今起きている。
辺境伯家にはどうにも出来ないほどピリピリとした空気感が漂っていた。
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