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Chapter 2
83*記憶
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「いや…まさか、あのセザールを落としたのが君の妹だとは驚きだね」
落ち着いた声色で、まるで確認するかの様にダニエルへ話しかける相手。
その輝く様な碧く魅力的な目からは、好奇心が見え隠れなど…
全くしていなかった!
むしろ、好奇心しかみえていないだろう。
王太子であるクリストファーは、興味津々と言った様子でダニエルからの報告を聞いている。そして、気になるところがあればその都度話を止めて、質問したり確認したりと大忙しだった。
「まぁ、兄としては色々と複雑でもあるだろう?」
「まぁ、そうですね。ですが、前々からナタリーはセザール様のことを好いていた様ですし…
とりあえず上手くいったようで、こちらとしては安心してます」
「そうか!では、セザールが訪れた時には、盛大に祝ってやらないとな♪」
まるで、ルンルンといった効果音でも聞こえてきそうな程、終始上機嫌のクリストファー。
ダニエルによる報告が大方終わった頃には、まるで愛おしい恋人を待つかの様にセザールの来訪を待ち望んでいた。
しかし、残念ながら、こんな時ほど想い人とは姿を現さないものだ。
王太子たる者、いつまでも来るかわからない相手を待つことは無い。
ある程度話を終えれば、すぐ様何事もなかったかの様に執務に戻るのだ。
そして、それは側近であるダニエルも同じだった。
「例の件、調査は進んでいるか?」
「はい。やはり裏にいたのは、エストニア侯爵家で間違いございません」
「…そうか」
「それと、少し気になることが…」
「なんだ?」
「エストニア侯爵家と繋がりがある貴族達の半数が、隣国デロイトとの交易を盛んに行っておりました」
「…デロイトであれば、今後とも交易を増やしていく予定にしているが?」
「はい、確かにそうですが…
彼等が頻繁に行っている取引は"闇市"でございました」
「闇市だと!?それは…っ、すでに内容は把握しているのか?」
「いえ、まだ正確なものまでは…
しかし、かなり厄介なものまで出しているようです」
「…三月後には、我が国の誕生祭が開催される。各国より大勢の人々が行き交うのだ。
悪いが、そちらを最優先で頼む。誕生祭までに、膿みを出し切るぞ」
「はっ!」
ダニエルは、話を終えると早々に王太子の執務室を後にした。
クリストファーは、手元に残った書類に再び目を向けるも、先程のダニエルからの報告が気になって仕方がなかった。
エストニア侯爵家といえば、建国より続く由緒正しい名門貴族であるが、数代前の侯爵による事業の失敗により多額の負債を請け負ったため、その後の世代は多額の借金返済に追われていた。
その為、以前に比べ社交界への足も遠くなっていたと記憶している。
それが、ここ数年…
ものすごい勢いで、資産を増やしているのだ。
一時は、クリストファーの婚約者候補としてエストニア侯爵令嬢の名も上がっていた。
しかし、家柄としては申し分ないのだが、彼女には他に想い人がいた為、自ら辞退したのだ。
もちろん、クリストファーの中では最初からアメリアを妃にと考えていた為、なんの問題もなかったのだが…
クリストファーは、ふと彼女の放った言葉を思い出した。
あまりにも、異質に感じられ忘れられなかった言葉…
『クリストファー様、ごめんなさい。
私の、身も心も彼の方のものなのです。
お告げがありましたのよ!私は彼の方の子を産むのだと!
そして、私が未来の王妃となるのです!
ふふっ…早く皆様の前で契りを交わし、私達の愛を証明したいですわ!
ふふふっ…あと何度交わればお子ができるかしら?
楽しみだわ~!
私を、手に入れれなくて大変残念ですが…
クリストファー様、気を落とされませんよう…
貴方様にも、素敵な方が見つかると宜しいですわね!』
そう言って、去っていく彼女の後ろ姿はどこか浮世離れしているように感じられた。
落ち着いた声色で、まるで確認するかの様にダニエルへ話しかける相手。
その輝く様な碧く魅力的な目からは、好奇心が見え隠れなど…
全くしていなかった!
むしろ、好奇心しかみえていないだろう。
王太子であるクリストファーは、興味津々と言った様子でダニエルからの報告を聞いている。そして、気になるところがあればその都度話を止めて、質問したり確認したりと大忙しだった。
「まぁ、兄としては色々と複雑でもあるだろう?」
「まぁ、そうですね。ですが、前々からナタリーはセザール様のことを好いていた様ですし…
とりあえず上手くいったようで、こちらとしては安心してます」
「そうか!では、セザールが訪れた時には、盛大に祝ってやらないとな♪」
まるで、ルンルンといった効果音でも聞こえてきそうな程、終始上機嫌のクリストファー。
ダニエルによる報告が大方終わった頃には、まるで愛おしい恋人を待つかの様にセザールの来訪を待ち望んでいた。
しかし、残念ながら、こんな時ほど想い人とは姿を現さないものだ。
王太子たる者、いつまでも来るかわからない相手を待つことは無い。
ある程度話を終えれば、すぐ様何事もなかったかの様に執務に戻るのだ。
そして、それは側近であるダニエルも同じだった。
「例の件、調査は進んでいるか?」
「はい。やはり裏にいたのは、エストニア侯爵家で間違いございません」
「…そうか」
「それと、少し気になることが…」
「なんだ?」
「エストニア侯爵家と繋がりがある貴族達の半数が、隣国デロイトとの交易を盛んに行っておりました」
「…デロイトであれば、今後とも交易を増やしていく予定にしているが?」
「はい、確かにそうですが…
彼等が頻繁に行っている取引は"闇市"でございました」
「闇市だと!?それは…っ、すでに内容は把握しているのか?」
「いえ、まだ正確なものまでは…
しかし、かなり厄介なものまで出しているようです」
「…三月後には、我が国の誕生祭が開催される。各国より大勢の人々が行き交うのだ。
悪いが、そちらを最優先で頼む。誕生祭までに、膿みを出し切るぞ」
「はっ!」
ダニエルは、話を終えると早々に王太子の執務室を後にした。
クリストファーは、手元に残った書類に再び目を向けるも、先程のダニエルからの報告が気になって仕方がなかった。
エストニア侯爵家といえば、建国より続く由緒正しい名門貴族であるが、数代前の侯爵による事業の失敗により多額の負債を請け負ったため、その後の世代は多額の借金返済に追われていた。
その為、以前に比べ社交界への足も遠くなっていたと記憶している。
それが、ここ数年…
ものすごい勢いで、資産を増やしているのだ。
一時は、クリストファーの婚約者候補としてエストニア侯爵令嬢の名も上がっていた。
しかし、家柄としては申し分ないのだが、彼女には他に想い人がいた為、自ら辞退したのだ。
もちろん、クリストファーの中では最初からアメリアを妃にと考えていた為、なんの問題もなかったのだが…
クリストファーは、ふと彼女の放った言葉を思い出した。
あまりにも、異質に感じられ忘れられなかった言葉…
『クリストファー様、ごめんなさい。
私の、身も心も彼の方のものなのです。
お告げがありましたのよ!私は彼の方の子を産むのだと!
そして、私が未来の王妃となるのです!
ふふっ…早く皆様の前で契りを交わし、私達の愛を証明したいですわ!
ふふふっ…あと何度交わればお子ができるかしら?
楽しみだわ~!
私を、手に入れれなくて大変残念ですが…
クリストファー様、気を落とされませんよう…
貴方様にも、素敵な方が見つかると宜しいですわね!』
そう言って、去っていく彼女の後ろ姿はどこか浮世離れしているように感じられた。
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