双子の転生先は双子でした

cc.

文字の大きさ
上 下
81 / 111
Chapter 2

76*本物か幻覚か

しおりを挟む
「私以外と、おつもりですか?」


窓から差し込む月の光によって、真っ白なシーツの上には銀色の輝くような髪が散らされていた。
そして、その中央のエメラルドに輝く宝石は、まるでセザールを射抜かんとする様に力強い光を放っていた。

本物なのか、幻覚なのか…

熱を持ち続けていた身体が、更に熱くなっていく。
触れたい、撫でたい、抱きたい、挿れたい…
迷いのない気持ちだけが、どんどん膨らんでいけば、無意識にその愛おしい存在へと手を伸ばしていた。

「もう、何でもいいっ!君が、例え幻であろうとも、今すぐ俺のものにする!」

そう、自分自身へと命じるように叫べば、ギュッとその柔らかな身体を引き寄せ抱きしめる。
そして、何度も角度を変えて柔らかな唇を堪能すれば、愛らしい吐息が漏れ出していく。

「っん…ふぁ、ぁっ!」

ちゅっちゅっ…と、重なり合うたび響く音にセザールは抗うことなどできなかった。
次第に、背中に支えられていた手はお尻へと伸びていき、その形の良い丸みを堪能し始め、頭を押し付けるように支えていた手は、優しく頬を撫で上げると首筋を通り胸元へと伸びていった。
弄るようにローブの上から、柔らかな双方の膨らみを揉みしだく。その刺激でビクッと身体を震わせば、その振動はダイレクトでセザールの下腹部へと届けられた。
そして、漸く唇を離し視線を胸元へと運ぼうとした瞬間…

__パチンッ!

スラリと伸びた手が、セザールの頬を赤く染めた。

目の前に、チカチカと星が光る。
決して強くはない。
軽く空を切ったかのような、そんな一撃にも関わらず、セザールの頭をすっきりとさせるには十分な事だった。

「セザール様、私を見て!」

その言葉に、ハッとし顔をあげれば…
そこには、今にも泣き出しそうに目にいっぱいの涙を溜めたナタリーが座っていた。

「…ナタリー、本当に?
夢じゃない…?幻でも…ないのか?」

そう言って驚くセザールは、未だ信じられない様子でブツブツと何かを呟いていた。
側から見ると、"襲った側が狼狽えている"そんな図である。

「セザール様」

優しく諭すように声をかけると、セザールは分かりやすくビクッと肩を揺らした。
そして、ゆっくりとその存在を視界に収めると、感際立ったようにくしゃりと顔を歪めた。
震える唇が、言葉を紡ぎ出そうと口を開く。

「…っ、ナタリー」

その声は、震えてはいたものの愛おしさで溢れていた。

「はい、ナタリーです」

そう短く返事をしたナタリーは、柔らかく微笑んだ。そして、セザールの元へ近づくと彼の膝にそっと手を乗せ宣言した。

「セザール様、私は貴方を諦めません」

「っ!?な…なにを…」

は、こちらのセリフです。貴方は、もう私を諦めるのですか?」

「っ!…きみはなにを言って」

ナタリーの言葉に、セザールは動揺を隠せなかった。まるで、頭を殴られたかのような衝撃がはしる。

諦めたいはずがない!
何のしがらみも無いのであれば、今すぐにでも彼女を連れさりたい程なのに…
だが、自分は貴族であり爵位をもつ領主なのだ。そして、彼女も歴とした貴族の令嬢である。
その肩には、多くの使用人をはじめとする領民の生活がかかっている。己の意思だけで、決めれる未来などないのだ。
辺境伯家のことを思えば、尚更自分は彼女には相応しく無い…
何度も何度も、彼女を諦めるための理由を探した。
彼女に、幸せになってほしい…その一心で。

しかし、熱った身体はセザールの思考にそっと蓋をしていった。

そして…

「好きです」

シーンと、静まり返った部屋にナタリーの優しい声だけが響いた。
その言葉に、吸い寄せられるように顔を上げれば、目の前には決意を固めたエメラルドがセザールを見据えていた。

セザールの決意が揺れる…

こんな、夢見たいなことがあっていいのだろうか?
目の前の愛しい人の口から、紡がれた言葉はセザールの心に深く響いていく。
胸が苦しい。
苦しくなるほど、嬉しくて仕方がなかった。
その手を取れたら、どれだけ幸せだろうか。

それでも…

彼と寄り添ったナタリーの姿が、頭の隅によぎれば全ての気持ちに自然とブレーキがかかる。
一度目を閉じ、必死に考えを切り替える。
そして、もう一度ナタリーに"幸せになってほしい"と伝えよう…

そう決めた瞬間…

「セザール、貴方を愛しています」

そう言ったナタリーの目からは、大粒の涙がキラキラと光を放ち落ちていった。

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...