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Chapter 2
76*本物か幻覚か
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「私以外と、何をするおつもりですか?」
窓から差し込む月の光によって、真っ白なシーツの上には銀色の輝くような髪が散らされていた。
そして、その中央のエメラルドに輝く宝石は、まるでセザールを射抜かんとする様に力強い光を放っていた。
本物なのか、幻覚なのか…
熱を持ち続けていた身体が、更に熱くなっていく。
触れたい、撫でたい、抱きたい、挿れたい…
迷いのない気持ちだけが、どんどん膨らんでいけば、無意識にその愛おしい存在へと手を伸ばしていた。
「もう、何でもいいっ!君が、例え幻であろうとも、今すぐ俺のものにする!」
そう、自分自身へと命じるように叫べば、ギュッとその柔らかな身体を引き寄せ抱きしめる。
そして、何度も角度を変えて柔らかな唇を堪能すれば、愛らしい吐息が漏れ出していく。
「っん…ふぁ、ぁっ!」
ちゅっちゅっ…と、重なり合うたび響く音にセザールは抗うことなどできなかった。
次第に、背中に支えられていた手はお尻へと伸びていき、その形の良い丸みを堪能し始め、頭を押し付けるように支えていた手は、優しく頬を撫で上げると首筋を通り胸元へと伸びていった。
弄るようにローブの上から、柔らかな双方の膨らみを揉みしだく。その刺激でビクッと身体を震わせば、その振動はダイレクトでセザールの下腹部へと届けられた。
そして、漸く唇を離し視線を胸元へと運ぼうとした瞬間…
__パチンッ!
スラリと伸びた手が、セザールの頬を赤く染めた。
目の前に、チカチカと星が光る。
決して強くはない。
軽く空を切ったかのような、そんな一撃にも関わらず、セザールの頭をすっきりとさせるには十分な事だった。
「セザール様、私を見て!」
その言葉に、ハッとし顔をあげれば…
そこには、今にも泣き出しそうに目にいっぱいの涙を溜めたナタリーが座っていた。
「…ナタリー、本当に?
夢じゃない…?幻でも…ないのか?」
そう言って驚くセザールは、未だ信じられない様子でブツブツと何かを呟いていた。
側から見ると、"襲った側が狼狽えている"そんな図である。
「セザール様」
優しく諭すように声をかけると、セザールは分かりやすくビクッと肩を揺らした。
そして、ゆっくりとその存在を視界に収めると、感際立ったようにくしゃりと顔を歪めた。
震える唇が、言葉を紡ぎ出そうと口を開く。
「…っ、ナタリー」
その声は、震えてはいたものの愛おしさで溢れていた。
「はい、ナタリーです」
そう短く返事をしたナタリーは、柔らかく微笑んだ。そして、セザールの元へ近づくと彼の膝にそっと手を乗せ宣言した。
「セザール様、私は貴方を諦めません」
「っ!?な…なにを…」
「なにをは、こちらのセリフです。貴方は、もう私を諦めるのですか?」
「っ!…きみはなにを言って」
ナタリーの言葉に、セザールは動揺を隠せなかった。まるで、頭を殴られたかのような衝撃がはしる。
諦めたいはずがない!
何のしがらみも無いのであれば、今すぐにでも彼女を連れさりたい程なのに…
だが、自分は貴族であり爵位をもつ領主なのだ。そして、彼女も歴とした貴族の令嬢である。
その肩には、多くの使用人をはじめとする領民の生活がかかっている。己の意思だけで、決めれる未来などないのだ。
辺境伯家のことを思えば、尚更自分は彼女には相応しく無い…
何度も何度も、彼女を諦めるための理由を探した。
彼女に、幸せになってほしい…その一心で。
しかし、熱った身体はセザールの思考にそっと蓋をしていった。
そして…
「好きです」
シーンと、静まり返った部屋にナタリーの優しい声だけが響いた。
その言葉に、吸い寄せられるように顔を上げれば、目の前には決意を固めたエメラルドがセザールを見据えていた。
セザールの決意が揺れる…
こんな、夢見たいなことがあっていいのだろうか?
目の前の愛しい人の口から、紡がれた言葉はセザールの心に深く響いていく。
胸が苦しい。
苦しくなるほど、嬉しくて仕方がなかった。
その手を取れたら、どれだけ幸せだろうか。
それでも…
彼と寄り添ったナタリーの姿が、頭の隅によぎれば全ての気持ちに自然とブレーキがかかる。
一度目を閉じ、必死に考えを切り替える。
そして、もう一度ナタリーに"幸せになってほしい"と伝えよう…
そう決めた瞬間…
「セザール、貴方を愛しています」
そう言ったナタリーの目からは、大粒の涙がキラキラと光を放ち落ちていった。
窓から差し込む月の光によって、真っ白なシーツの上には銀色の輝くような髪が散らされていた。
そして、その中央のエメラルドに輝く宝石は、まるでセザールを射抜かんとする様に力強い光を放っていた。
本物なのか、幻覚なのか…
熱を持ち続けていた身体が、更に熱くなっていく。
触れたい、撫でたい、抱きたい、挿れたい…
迷いのない気持ちだけが、どんどん膨らんでいけば、無意識にその愛おしい存在へと手を伸ばしていた。
「もう、何でもいいっ!君が、例え幻であろうとも、今すぐ俺のものにする!」
そう、自分自身へと命じるように叫べば、ギュッとその柔らかな身体を引き寄せ抱きしめる。
そして、何度も角度を変えて柔らかな唇を堪能すれば、愛らしい吐息が漏れ出していく。
「っん…ふぁ、ぁっ!」
ちゅっちゅっ…と、重なり合うたび響く音にセザールは抗うことなどできなかった。
次第に、背中に支えられていた手はお尻へと伸びていき、その形の良い丸みを堪能し始め、頭を押し付けるように支えていた手は、優しく頬を撫で上げると首筋を通り胸元へと伸びていった。
弄るようにローブの上から、柔らかな双方の膨らみを揉みしだく。その刺激でビクッと身体を震わせば、その振動はダイレクトでセザールの下腹部へと届けられた。
そして、漸く唇を離し視線を胸元へと運ぼうとした瞬間…
__パチンッ!
スラリと伸びた手が、セザールの頬を赤く染めた。
目の前に、チカチカと星が光る。
決して強くはない。
軽く空を切ったかのような、そんな一撃にも関わらず、セザールの頭をすっきりとさせるには十分な事だった。
「セザール様、私を見て!」
その言葉に、ハッとし顔をあげれば…
そこには、今にも泣き出しそうに目にいっぱいの涙を溜めたナタリーが座っていた。
「…ナタリー、本当に?
夢じゃない…?幻でも…ないのか?」
そう言って驚くセザールは、未だ信じられない様子でブツブツと何かを呟いていた。
側から見ると、"襲った側が狼狽えている"そんな図である。
「セザール様」
優しく諭すように声をかけると、セザールは分かりやすくビクッと肩を揺らした。
そして、ゆっくりとその存在を視界に収めると、感際立ったようにくしゃりと顔を歪めた。
震える唇が、言葉を紡ぎ出そうと口を開く。
「…っ、ナタリー」
その声は、震えてはいたものの愛おしさで溢れていた。
「はい、ナタリーです」
そう短く返事をしたナタリーは、柔らかく微笑んだ。そして、セザールの元へ近づくと彼の膝にそっと手を乗せ宣言した。
「セザール様、私は貴方を諦めません」
「っ!?な…なにを…」
「なにをは、こちらのセリフです。貴方は、もう私を諦めるのですか?」
「っ!…きみはなにを言って」
ナタリーの言葉に、セザールは動揺を隠せなかった。まるで、頭を殴られたかのような衝撃がはしる。
諦めたいはずがない!
何のしがらみも無いのであれば、今すぐにでも彼女を連れさりたい程なのに…
だが、自分は貴族であり爵位をもつ領主なのだ。そして、彼女も歴とした貴族の令嬢である。
その肩には、多くの使用人をはじめとする領民の生活がかかっている。己の意思だけで、決めれる未来などないのだ。
辺境伯家のことを思えば、尚更自分は彼女には相応しく無い…
何度も何度も、彼女を諦めるための理由を探した。
彼女に、幸せになってほしい…その一心で。
しかし、熱った身体はセザールの思考にそっと蓋をしていった。
そして…
「好きです」
シーンと、静まり返った部屋にナタリーの優しい声だけが響いた。
その言葉に、吸い寄せられるように顔を上げれば、目の前には決意を固めたエメラルドがセザールを見据えていた。
セザールの決意が揺れる…
こんな、夢見たいなことがあっていいのだろうか?
目の前の愛しい人の口から、紡がれた言葉はセザールの心に深く響いていく。
胸が苦しい。
苦しくなるほど、嬉しくて仕方がなかった。
その手を取れたら、どれだけ幸せだろうか。
それでも…
彼と寄り添ったナタリーの姿が、頭の隅によぎれば全ての気持ちに自然とブレーキがかかる。
一度目を閉じ、必死に考えを切り替える。
そして、もう一度ナタリーに"幸せになってほしい"と伝えよう…
そう決めた瞬間…
「セザール、貴方を愛しています」
そう言ったナタリーの目からは、大粒の涙がキラキラと光を放ち落ちていった。
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