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Chapter 1
54*双子とお風呂
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ノアールの国王夫妻を送り出したあとは、父ライウスと少し話をして、すぐに帰宅させられた。
ライウス曰く、『あの夫妻は、良い意味でも悪い意味でも話題を集めやすい方々だから』だ、そうだ。
理由はともかく、朝からアレキサンダーの準備に加え、予定外の仕事(ノアール国王夫妻の準備)まで追加され、まともに休む間もなく忙しなく働いていた2人は、嬉々として帰路についた。
屋敷についてからは、2人でゆったりとお風呂に浸かり、新たに開発中の"泥パック"の試作品を堪能し、感想や改善点を述べながら、持ってきたシャンパンで喉を潤していた。
「あーーー、日本酒が恋しい!」
「ははっ!由希は好きだもんね~!
あの渓流沿いに造られた露天風呂に行くと、いつも升酒頼んでたし!」
「それね!シャンパンも悪くはないのよ?現に、辺境伯家のお風呂に升は似合いないから。
悪くはないんだけど…元日本人の温泉好きとしては、月明かりの中、露天風呂にしっぽりと浸りながら、浮かべたお盆を手繰り寄せちびちびと日本酒を堪能する!
このシチュエーションが、グッとくるよね~!」
そう言った、由希ことナタリーは露天風呂に浸る情景を思い出したのか、懐かしそうにしつつも少しだけ寂しそうに目を閉じた。
___最後に、温泉に行ったのっていつだっけ?
心の中で、自身に語りかけた時…
由希の中で思い出されたのは、当時付き合っていた彼のことだった。
「翔と行った旅行が最後かぁ…」
「あぁ、最後に付き合ってた人だっけ?」
「うん…あの、クズ!
あいつとの旅行が最後とか、まじ最悪だわ…」
「えっと…浮気してたんだっけ?」
「浮気!?そんな可愛いもんじゃないから!!あれは売春だよ、売春!
本人は、『売上きつくて枕営業した』って言ってたけど、一度の枕で15万とかもらってたら、もはやただの売春でしょっ!?
しかも、最年長が60手前のマダムとか…絶対ないよね!?」
「ないね。てか、どっちもキモい。元彼もそのマダムも…
でも、別れられて良かったじゃん。しかも、もう二度と会うこともないし!」
「確かに!!
それは、かなり嬉しいかも!」
由希が以前(前世でだが)付き合っていた人は、ほどほどに名の売れた美容師だった。まぁ、同業界で賞を総なめにしていた由希程ではないが、それでも雑誌などにも取り上げられるぐらいには有名な人。
そんな人でも、売り上げが足りないからといって、客と一夜を共にするとは…なんとも情けない。
由希だって、自分の店を持っていたのだ。売上がきつい時だってある。それでも、身体を使ってまで、売上を補填することはない。
プロとしての、プライドが許さないのだ。
そして、何より他の人を抱いておきながら、由希も抱こうとするその精神が、もう無理だった。
その事実を知った瞬間、由希は仕事を休んで産婦人科に駆け込んだほどだ。
別れ話は、彼のサロンで一言。
「性病にかかる前に別れる」
だった。
そう言った瞬間…サロンが静まり返っていたのは言うまでもない。
温泉旅行へ行った頃は、とても幸せだった。
付き合って3年目の記念旅行だった。
お互い仕事の都合上、なかなか休みを合わせることができず、やっと行けた喜びで何度も愛し合った。
今では、懐かしさよりも苦い思い出となっているが…
確かに、幸せだった。
相手過去の恋愛に不満を漏らしつつも、最後は笑い合いながら、昔話に花を咲かせていた。
そして、その話は自然と今の恋愛へと続いていく。
「ところで、由希じゃなくてナタリー的に彼とはどうなの?」
ライウス曰く、『あの夫妻は、良い意味でも悪い意味でも話題を集めやすい方々だから』だ、そうだ。
理由はともかく、朝からアレキサンダーの準備に加え、予定外の仕事(ノアール国王夫妻の準備)まで追加され、まともに休む間もなく忙しなく働いていた2人は、嬉々として帰路についた。
屋敷についてからは、2人でゆったりとお風呂に浸かり、新たに開発中の"泥パック"の試作品を堪能し、感想や改善点を述べながら、持ってきたシャンパンで喉を潤していた。
「あーーー、日本酒が恋しい!」
「ははっ!由希は好きだもんね~!
あの渓流沿いに造られた露天風呂に行くと、いつも升酒頼んでたし!」
「それね!シャンパンも悪くはないのよ?現に、辺境伯家のお風呂に升は似合いないから。
悪くはないんだけど…元日本人の温泉好きとしては、月明かりの中、露天風呂にしっぽりと浸りながら、浮かべたお盆を手繰り寄せちびちびと日本酒を堪能する!
このシチュエーションが、グッとくるよね~!」
そう言った、由希ことナタリーは露天風呂に浸る情景を思い出したのか、懐かしそうにしつつも少しだけ寂しそうに目を閉じた。
___最後に、温泉に行ったのっていつだっけ?
心の中で、自身に語りかけた時…
由希の中で思い出されたのは、当時付き合っていた彼のことだった。
「翔と行った旅行が最後かぁ…」
「あぁ、最後に付き合ってた人だっけ?」
「うん…あの、クズ!
あいつとの旅行が最後とか、まじ最悪だわ…」
「えっと…浮気してたんだっけ?」
「浮気!?そんな可愛いもんじゃないから!!あれは売春だよ、売春!
本人は、『売上きつくて枕営業した』って言ってたけど、一度の枕で15万とかもらってたら、もはやただの売春でしょっ!?
しかも、最年長が60手前のマダムとか…絶対ないよね!?」
「ないね。てか、どっちもキモい。元彼もそのマダムも…
でも、別れられて良かったじゃん。しかも、もう二度と会うこともないし!」
「確かに!!
それは、かなり嬉しいかも!」
由希が以前(前世でだが)付き合っていた人は、ほどほどに名の売れた美容師だった。まぁ、同業界で賞を総なめにしていた由希程ではないが、それでも雑誌などにも取り上げられるぐらいには有名な人。
そんな人でも、売り上げが足りないからといって、客と一夜を共にするとは…なんとも情けない。
由希だって、自分の店を持っていたのだ。売上がきつい時だってある。それでも、身体を使ってまで、売上を補填することはない。
プロとしての、プライドが許さないのだ。
そして、何より他の人を抱いておきながら、由希も抱こうとするその精神が、もう無理だった。
その事実を知った瞬間、由希は仕事を休んで産婦人科に駆け込んだほどだ。
別れ話は、彼のサロンで一言。
「性病にかかる前に別れる」
だった。
そう言った瞬間…サロンが静まり返っていたのは言うまでもない。
温泉旅行へ行った頃は、とても幸せだった。
付き合って3年目の記念旅行だった。
お互い仕事の都合上、なかなか休みを合わせることができず、やっと行けた喜びで何度も愛し合った。
今では、懐かしさよりも苦い思い出となっているが…
確かに、幸せだった。
相手過去の恋愛に不満を漏らしつつも、最後は笑い合いながら、昔話に花を咲かせていた。
そして、その話は自然と今の恋愛へと続いていく。
「ところで、由希じゃなくてナタリー的に彼とはどうなの?」
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