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Chapter 1
47*振り回される双子
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「流石に、一言言わせて下さい」
と、始まった衣装打ち合わせの場所には、何故か錚々たるメンバーが揃っていた。
まず、主役であるアレキサンダー殿下。
「あぁ、悪い!」と、謝罪しながらも手に持った書類から目を逸らす事はない。それ程までに忙しい為、なかなか予定を空けることが出来なかったのだ。
そんな殿下に「あり得ないほど遅すぎます。魔法使いでもないのですから、服がすぐ出来るわけないでしょ!」と、一頻り文句を言うアシュリーの手によって、どんどん採寸が行われていった。
その横では、ナタリーが王太子クリストファーの婚約者であるアメリアに対して、ネイルを施していた。ここは、女性同士のため大変楽しそうにお喋りをしながら進めている。
そして、その隣の席ではアメリアに付き添ってきた王太子クリストファーが、兄ダニエルと何やら難しそうに話し込んでおり、その後ろのソファーでは母ミリアーナがクリストファーの母であり、この国の王妃であるシャーロットと優雅にお茶を楽しんでいた。
もちろん、この場に王弟、王太子、王妃…と、くれば、何故か陛下もいらっしゃるわけで…
部屋の最奥の執務机にて、父ライウスと共に執務に励んでいる。
この国の、最重要人物たちが一同に集まっているこの部屋は、現在国で最も警戒レベルが高い部屋になっていることは言うまでもないだろう。
アレキサンダーから、連絡が来たのはこの2日前だった。
急遽も急遽、『2日後の、この時間に伺う』とだけ記された手紙をもらったアシュリーは、思わずそれをぐしゃぐしゃに握りしてめいた。
すぐさま、母に伝えて迎える為の準備を整えたのだが、辺境伯家が不満を持つのは当然のことだった。
もともと、この日はエリザベスからの紹介でアメリアがネイルの予約をいれていたのだ。
そして、その彼女に付き添いたい!と、希望したクリストファーが来ることになると、必然的に兄率いる近衛騎士数名が護衛としてやってくる。
そこに、アレキサンダーの突然参加が決まるとなると、流石に警備の問題が生じてくるのだ。
この時点で、既にかなりの数の騎士達が警備にあたるために召集されていた。
そこへ、まさかの陛下と王妃の登場である。
どんなに迷惑だと思っても、国で1番偉い方々を「迷惑です!」などと、断れるはずがない。
その結果、其々に対して個々で対応することになったのだった。
そして、現在。
アシュリーは、可能な限りの文句をアレキサンダーへとぶつけながら、黙々と採寸をしていた。もはや、目上の方なんてどうでもいいのだ。
「ちょっと、常識なさすぎでしょう!」
「いくらなんでも、家族総出でくるなんて…」
『頭おかしいんじゃない!?』
とは言わずに、心の中だけで叫ぶ。
「いや、すまない。まさか、兄上や義姉上まで、行きたいと言い出すとは思わなかったのだ…」
そう、申し訳なさそうに答えたアレキサンダーの顔には、はっきりと疲労の色が浮かんでいた。
なんでも、辺境伯から了承の返事を受け取った際に、たまたま陛下と王妃が側にいたらしい。そして、滅多に他所へ出向くことのない王弟が出かける約束をしていることに興味津々で2人して付いてきてしまったらしい。
その話を聞いた双子は、同じことを思っていた。
『一国の王様と王妃様がそれでいいのか!?』と。
しかし、そう不安に感じていたのは双子だけだったらしく…
父と母、そして近衛である兄は"仕方がないな"といった程度で王族の対応をしているのだ。
もちろん、遠回しに嫌味は言っているが、それはどことなく可愛らしいものだった。
「陛下、此方とこちらと…あぁ、こちらの書類にも目を通して下さい。
あと、残りの書類もこちらに届けさせますので、速やかに判をお願いいたします」
有無を言わせない微笑みを浮かべ、陛下へと書類を渡し続ける父、王妃様と楽しそうにお茶をしている母、王太子と兄は難しそうな話が終わったのか真剣な様子でチェスを嗜んでいる。
その様子に、王族と辺境伯家との仲の良さが垣間見れた。
と、始まった衣装打ち合わせの場所には、何故か錚々たるメンバーが揃っていた。
まず、主役であるアレキサンダー殿下。
「あぁ、悪い!」と、謝罪しながらも手に持った書類から目を逸らす事はない。それ程までに忙しい為、なかなか予定を空けることが出来なかったのだ。
そんな殿下に「あり得ないほど遅すぎます。魔法使いでもないのですから、服がすぐ出来るわけないでしょ!」と、一頻り文句を言うアシュリーの手によって、どんどん採寸が行われていった。
その横では、ナタリーが王太子クリストファーの婚約者であるアメリアに対して、ネイルを施していた。ここは、女性同士のため大変楽しそうにお喋りをしながら進めている。
そして、その隣の席ではアメリアに付き添ってきた王太子クリストファーが、兄ダニエルと何やら難しそうに話し込んでおり、その後ろのソファーでは母ミリアーナがクリストファーの母であり、この国の王妃であるシャーロットと優雅にお茶を楽しんでいた。
もちろん、この場に王弟、王太子、王妃…と、くれば、何故か陛下もいらっしゃるわけで…
部屋の最奥の執務机にて、父ライウスと共に執務に励んでいる。
この国の、最重要人物たちが一同に集まっているこの部屋は、現在国で最も警戒レベルが高い部屋になっていることは言うまでもないだろう。
アレキサンダーから、連絡が来たのはこの2日前だった。
急遽も急遽、『2日後の、この時間に伺う』とだけ記された手紙をもらったアシュリーは、思わずそれをぐしゃぐしゃに握りしてめいた。
すぐさま、母に伝えて迎える為の準備を整えたのだが、辺境伯家が不満を持つのは当然のことだった。
もともと、この日はエリザベスからの紹介でアメリアがネイルの予約をいれていたのだ。
そして、その彼女に付き添いたい!と、希望したクリストファーが来ることになると、必然的に兄率いる近衛騎士数名が護衛としてやってくる。
そこに、アレキサンダーの突然参加が決まるとなると、流石に警備の問題が生じてくるのだ。
この時点で、既にかなりの数の騎士達が警備にあたるために召集されていた。
そこへ、まさかの陛下と王妃の登場である。
どんなに迷惑だと思っても、国で1番偉い方々を「迷惑です!」などと、断れるはずがない。
その結果、其々に対して個々で対応することになったのだった。
そして、現在。
アシュリーは、可能な限りの文句をアレキサンダーへとぶつけながら、黙々と採寸をしていた。もはや、目上の方なんてどうでもいいのだ。
「ちょっと、常識なさすぎでしょう!」
「いくらなんでも、家族総出でくるなんて…」
『頭おかしいんじゃない!?』
とは言わずに、心の中だけで叫ぶ。
「いや、すまない。まさか、兄上や義姉上まで、行きたいと言い出すとは思わなかったのだ…」
そう、申し訳なさそうに答えたアレキサンダーの顔には、はっきりと疲労の色が浮かんでいた。
なんでも、辺境伯から了承の返事を受け取った際に、たまたま陛下と王妃が側にいたらしい。そして、滅多に他所へ出向くことのない王弟が出かける約束をしていることに興味津々で2人して付いてきてしまったらしい。
その話を聞いた双子は、同じことを思っていた。
『一国の王様と王妃様がそれでいいのか!?』と。
しかし、そう不安に感じていたのは双子だけだったらしく…
父と母、そして近衛である兄は"仕方がないな"といった程度で王族の対応をしているのだ。
もちろん、遠回しに嫌味は言っているが、それはどことなく可愛らしいものだった。
「陛下、此方とこちらと…あぁ、こちらの書類にも目を通して下さい。
あと、残りの書類もこちらに届けさせますので、速やかに判をお願いいたします」
有無を言わせない微笑みを浮かべ、陛下へと書類を渡し続ける父、王妃様と楽しそうにお茶をしている母、王太子と兄は難しそうな話が終わったのか真剣な様子でチェスを嗜んでいる。
その様子に、王族と辺境伯家との仲の良さが垣間見れた。
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